昼休みになっても佐助が現れないことを幸村が気にしだした。
佐助は一応真面目だから遅刻もしなければ、サボりもしない。
だから昼休みには必ずいる、そうじゃなくとも連絡の一つ位は入るのだ。
だが、今日は誰も姿を見ていなければ連絡の一つも受けていない。
昼休み、大体佐助と一緒に弁当を食う幸村とそれに付き合わされる政宗、元親、元就。
この四人は只今真っ青な空の下、今居ない友人を待っていた。
「遅いでござるー・・・某腹が減って・・・」
1-C 真田幸村。
冒頭で語られた猿飛佐助とは親戚同士であり、また同居人である。
「先に食ってりゃいいだろが」
2-A 伊達政宗。
幸村とは佐助を通じて知り合った。
「某の弁当は佐助が持ってくるのでござる。だから佐助が来なければ無い」
「いつまでアイツに弁当作らせてんだ…」
恨めしそうに見てくる幸村を一蹴りする政宗。
「全く…それでは猿飛の苦労も絶えぬものよの…」
3-B 毛利元就。
この学園の生徒会長で、元親とは幼馴染。
「大変だなー佐助も」
3-B 長曾我部元親。
政宗の喧嘩友達で元就とは幼い頃からのくされ縁。
元就と元親は付き合ってられない、と言う表情をして先に自分の分の弁当を食べていた。
「うう――・・・」
「うるせえ、唸るな。これやるから食ってろ」
面倒見が良い政宗は自分が持っていた菓子パンを一つ幸村に与えてやる。
幸村はそれを見た瞬間嬉しそうにかぶりつく。
「かたじけない!!政宗殿」
「Your welcome.その代わり今度何か奢らせるからな」
「あ、いけね。俺飲みモン忘れた。ちょっと買ってくるわ」
元親が階下に行く為に屋上の扉を開けようとした、その瞬間だった。
バタバタを足音が響き、扉が思い切り開いた。
「ごめーん。遅れたぁ」
2-A 猿飛佐助。
冒頭から話題になっていた人物である。
主に幸村のオカン的な存在で有名だ。
「佐助?!遅いでござる!一体何をしておったのだ?」
「午前中全部サボったろ」
弁当を待ちくたびれていた幸村から怒鳴るように叫ばれ、佐助は溜息をついた。
「仕方ないんだよ――・・・何しろ急だったからねえ・・・。ほら、挨拶しな」
は?と皆が首を傾げる。
今の言葉は誰に向かって言ったんだ?と。
すると佐助の後ろから小さな影が顔を出した。
「・・・はじめまして。、よんさい・・・」
全員が硬直した。
何故、高校に小学生にも満たない子供がいるのだろう、いやそんなことよりも・・・・。
この子供がまた可愛らしかった。
「・・・・佐助、とうとう犯罪に手を染めたのか・・・?」
「悪い事は言わねえから自首しろって」
「見損なったぞ」
「・・・幸村の旦那、元親、元就・・・変な誤解してない?してるっしょ?」
「何処で拾ってきた。持ち主に返して来い」
「政宗も!!」
あまりにも全員が真面目な顔で言ってくるもんだから佐助の米神に青筋が立ちそうだった。
佐助は皆の輪に交じり、事の経緯を話した。
「なんか変な誤解してるみたいだけど、この子はかすがの弟なんだよ」
「かすが殿の?それをなんでまた佐助が連れてきているのだ?」
「アイツ留学するらしくてさ、んで家が近い俺様が預かる事になったの。まあ幼馴染だし、知らない仲じゃないしね」
「Ahー・・・そっかかすがのとこ親いねえもんな」
佐助は自分の背に隠れていた少年を自分の前へ引きずり出し、膝に乗せた。
「まあ自己紹介くらいしてやってよ。多分これからしょっちゅう顔合わすし」
「学校に連れてくんのか?よく織田校長が許したな」
「なんか織田校長もの事気に入ってるみたいでさ。授業中は濃先生(保健医)が見てくれるって」
「すげえな・・・。あの夫婦に気に入られるとは」
この学園の校長、織田信長は大変気難しいと有名である。
それがこんな子供を気に入るとは…。
前々からショタコン(笑)ではないかという噂もあったが…それは本当だったのか?!
まずは先陣きって幸村が話しかけた。
「某、真田幸村と申す。よろしくでござる、」
「・・・」
じっと幸村を見つめる。
「あ、あの・・・・?」
あまりにも反応が無いので、自分の挨拶がまずかったのか不安になる幸村。
すると佐助が
「大丈夫、何もされてないってことは気に入られてる証拠だから。一目で気に食わない奴だったら苦無が飛んでくるよ」
オイオイオイオイオイ!!それを先に言えよ!!
しかし、不安とは裏腹に
「よろしくー・・・幸兄ぃ」
はふにゃっとさっきまでの無表情を打ち消すような笑みを浮かべた。
ズッキュウウウウウウウン!!
幸村の心に300のダメージ。
勿論それを傍で見ていた他の三人も例外ではない。
「は人見知り激しくてさー。じっと観察して自分が気に入れば素を出すんだけど、旦那は問題無かったみたいだね」
レアだよ、今の笑顔。と佐助は付け加えた。
今のを見て、元親が動いた。
「俺は長曾我部元親ってんだ。よろしくな、!」
続いて元親が名乗った。
またもじっと元親を見つめる。
・・・・・・・・・
この無言の間は意外と怖い。
どっちだ?気に入ったのか?気に入らなかったのか?
とてとてとてとてとてとて
は立ち上がると元親の方に歩み寄った。
ぽす
なんと元親に抱きついたのだ。
「よろしく・・・親兄ぃ」
そしてまた人好きのする笑顔を浮かべたのだ。
「ずるいでござるぅぅ!元親殿ぉぉ!」
「へへん!悔しかったら好かれろ」
自分にだけ抱きついてきてくれたのがよっぽど嬉しかったのか凄く自慢げな元親。
一方不満を顔に出しまくる幸村。
「わーお・・・珍しい。初対面で其処まで懐くなんて・・・。上杉先生以来だね」
「上杉にまで懐いてんのか?コイツ。姉弟揃って・・・・」
呆れ声を出したのは政宗。
そして元就も、一歩踏み出してみた。
「我は毛利元就だ」
元就も自己紹介をした、例によってじっと元就を見つめる。
そして元親から離れたは元就の傍に寄って行き、制服の袖を軽く掴む。
「よろしく・・・就兄ぃ」
これまた笑顔を浮かべる。
元就は掴れていない方の手での頭を撫でてやった。
他の四人は「あの元就が!?」というような顔で見ている。
さて、最後はこの人。
言うまでも無く、伊達政宗。
政宗はここまで全員に好印象を見せたのだから、まさか自分だけ拒否されるなんてことは無いだろうと思っていた。
「俺は伊達政宗だ。よろしくな、Kitty」(子猫ちゃん)
笑顔を軽く浮かべ、反応を待ってみる。
…が!!
「………」
政宗を見上げたまま、何も言わない。
心なしか全員に汗が流れる。
は元就を掴んでいた手を離し、数歩下がる。
「あ、あれ?どうしたのかな?ほらほら、ご挨拶は?」
佐助の心に不安が流れる。
ま、まさか・・・・・
次の瞬間に両手には幼児には似つかわしくない苦無が握られていた。
「やっぱりーーー!?」
佐助が叫んだ瞬間、の手に握られていた苦無は全て政宗に向かっていた。
勿論必死に避ける政宗。
「な、何しやがる!?」
「お、落ち着け!」
元親がを抱き上げる。
意外にもは暴れず、大人しくしている。
「どうした?。なんぞこやつが気に食わんかったか?」
「Hey、元就。その言い草は俺が気にいらねえ」
優しく元就が尋ねてみると、今まで一文字に結ばれていた口が開かれた。
「だって、おねえが“伊達は切れやすいからやられる前にやれ”って」
・・・・・・・・・・・・・・五人絶句。
おねえ、と言うのは言うまでも無くかすがのこと。
どうやらあまり伊達のことをよく思っていないかすがはに先に忠告しておいたらしい。
「Shit!!かすがの野郎・・・・」
立ち上がり、今にもかすがの所へ乗り込みそうな政宗を佐助が慌てて止める。
「わわ!!待った政宗!の前でかすがの事を悪く言っちゃ駄目だ!!」
「あ?」
チラッとの方を見ると、再び苦無を構えている。
しかも顔は無表情。
ぞっとした政宗は咳払いをし、座りなおした。
「・・・Sorry.でもな、。俺は別に何でもかんでも切れるわけじゃあねえぞ」
「おれにおこらない?」
「何もしてねえのに怒らねえよ」
「・・・・」
は苦無をしまった。
ほう・・・と全員が安堵の息を漏らした。
小さな手は政宗の制服の袖を軽く掴み
「・・・・・よろしく、政兄ぃ」
ぽそりと呟く。
政宗はワシャワシャと頭を撫でてやった。
「ま、これでこのメンバーには問題なしっと」
安堵の息を漏らす佐助に幸村が尋ねた。
「誰か問題ある奴いたのでござるか?」
「・・・ちょっと明智の旦那に。後、ザビー先生かなあ」
「ああ・・・・(だろうな)」
要は異色な奴には懐かない、と。
ここからの学園生活は始まった。