「すまねえ!!!」
「この通りでござる!!!」




朝、襖を開ければ土下座状態の元親と幸が其処にいた。






「…ああ?」

「まだ兄上の怒りが解けてなくとも構いませぬ!!けれど無視だけは嫌でござる〜〜〜!」
「幾らでも罵っていいからよ!!せめていないもの扱いだけはやめてくれ!!」




そんなに必死になって謝るほどオレはまだ何もしてないだろ…。
ってか、大体一晩経ってまでひきずりゃしねえよ。



「…いつまで床に額こすりつけてる気だ…?そろそろ朝餉なんじゃねえの?」
「…あ、兄上……」
……」



「もう怒ってねえよ。オラ、行こうぜ」




さっきまで絶望の淵に立たされたような顔だったくせに。
今は其処から救い出されたような顔。





兄上〜〜〜!!」
〜〜〜」
「うぎゃあ!!お前らの方がでかいんだからひっつくな!」









デカイ犬二匹を引っ付かせたまま、オレは広間へと向かった。
何やら犬二匹は後ろでぎゃんぎゃん騒いでいたが気にしない方向で。







「悪いな、遅くなって」


部屋に入るなり、何故か全員が驚いた。




「…なんだよ」

「え、いや…師匠、もう怒って…ないの?」
「機嫌は…直ったのか…?」
「てっきり…俺達の顔も見たくないもんかと思ったぜ…」




皆が昨日のことが気まずいようで目線を逸らしたり、顔を俯かせたりしていた。
ああ、こんなに気にするとは思わなかったんだけどなあ……。







「まあ、オレも怒鳴ったけど、お互い様ってことで。もういいや。オレこそごめんな、心配してくれたのによ」



「……師匠…」
「…それなら…よいのだが…」
「…さすが、My brotherだぜ…」



おお、良かった。
これで全員元に戻ったな。


























あまり、変な緊迫状態が続くとオレの事感づかれちまうしな。































「…そういや、いつまで旦那達は師匠に引っ付いてるのかな…?」




佐助、手に握ってるしゃもじがピキピキ言ってるぞ。




「…でっかい犬が纏わり付いてんな…。今払うぜ…」




あ、政の茶碗が割れそうだ。





「…少々図に乗りすぎだ…」




元就、まさかその手に持った湯のみこっちに投げないよなあ?












「ちょ、ちょっと待てお前ら!!!」
「お、落ち着いて欲しいでござる!!!」


「「「問答無用!!!」」」





「「ぎゃ――――――――!!!!!」」


「うわ!ちょっと待て!!オレまで巻き込むな!!!」






オレを抱えたまま元親と幸は逃げ回り、そのことで三人が益々ヒートアップしたり。


不謹慎かもしれないけど、凄く楽しかった。






























こんな日常が続けば良いのに。











戦も天下も無しで、こいつらがただの友人同士で





こんな平和な日常が続けば良いのに。


















――そう望んでは、いけないのだけれど―――




























「フフフ…此処ですね」



不気味な雰囲気を纏わり付かせた男が一人、中国へ辿り着いた。
着ている物は鎧ではなく、普通の着物という軽装。
なのに、何故かどこか一般人ではないと思わせるこの男。




長い髪を潮風に靡かせながら、男は馬を走らせる。








「まずは……毛利の城ですかね…。ようやく、逢えますよ……ああ早く、貴方の血が見たい…」





男は懐から小さな袋を取り出すと、その中から蒼い玉を出した。






「きっと私の事は覚えて…無いでしょうねえ…」




その呟きだけは、哀しみが宿っていた。