「虎牙破斬!!」

「ノクターナルライト!!」







大分進んできたけれど、未だ何も収穫なし。
モンスターだけはうじゃうじゃといて…ああ、疲れた…。








「ティア…ちょっと休憩していいか?」

「…そうね。さっきから連戦だものね。何か作るわ」









壁に背を寄りかからせて座り込むと少し楽。
1人で戦うより、仲間と一緒で自分1人が前線って言う方が辛いってことがわかった。

今まではシンクやロイドがいたもんな…。
どうしてるかな、二人共…。










年が近い友達はまだロイドやシンク、ノーマしかいない。

ロニは兄貴みたいだし、マリーさんは…お母さんって言うのかな?

クラースさんはお父さんかな、でもまだ若いって怒るかも。










「…なんて言うのかな…こういうの」





急に寂しいって感情が広がってきた。
ティアやリオンがいても拭えなかった感情。








さん、大丈夫ですの?」






ぴょこんと道具袋から顔を出したミュウ。
戦闘中は危ないから入れたんだっけ…?










「…うーん、なんだか不調カモ。なんだろね、これ」
「ロイドさんやノーマさんがいなくて寂しいですの?」

「そー…なのかな…」

別に独りぼっちってわけでもないし、そんなに幼い精神でもないはずなんだけど。








「それはホームシックですの!」
「ホームシック?」
「知らない所に来たからお家が恋しくなってしまったですの」
「…家…?」











、気をつけろよ。終わったら…帰ってくるんだろ?」




「アンタは此処のアドリビトムなんだからね。解ってる?」











「あ…」








そうか、オレはいつの間にかあそこに馴染んでいたんだ。



離れがたい程心地よかったんだ。















「大丈夫ですの!お仕事が終わったら会えるですの!」
「…おう!そうだな」





帰りを待っててくれる人がいるから、人は何処にでも行ける。























…サンドイッチを作ったけど食べられる?」

「うん、ありがとティア。コレ食ったらまた頑張らなきゃな!」
「…どうしたの?急に元気になったみたい」

「待ってくれてる人がいるから、かな?」

「???」







もう大丈夫。




























「…昇れるだけ昇って来たけど何も無いわね…」

「…おかしいな。入り口のような仕掛けが何も無いとは」




リアラ・リオン組は最上階、と言っても三階の一番奥の部屋に辿り着いていた。
ほとんどがただの空き部屋で、これと言った発見は無かった。

上に来る時もほとんど魔物と出くわす事も無かった。




「ハズレ、ということだな。僕らは無駄足だったと言うわけだ」
「ということはやティアが危ないわ!早く下へ降りなきゃ……
!!?
「どうし……
なっ!!?








二人が戻ろうと引き返そうとした時、今まで通った道には魔物で溢れていた。
今の今まで何処に隠れていたのか判らないくらいに大量の魔物。



「…成程、こういう罠だったのか。中々効率的だな、感心する」
「そんなこと言ってる場合じゃないわ!!もしかしたら二人の方にも魔物が…」
「ティアも軍人だ。アイツだってそれなりに戦える。今は自分の心配をしろ」





リオンはマントを翻し、敵に向かっていった。






























「…やっぱり、あそこと同じだ」
「…なんて純度の高いマナに満ちた部屋なの…」



最下層の突き当たりの部屋に辿り着いた二人は中の空気に鳥肌が立った。

そこは聖域と同じ、マナに満ちた空間。
不純なものが入れない場所。




「……う…」


「ん?今、声が聞こえなかった?」
「ええ…暗くてよく見えないけど…向こうの方に誰かいるみたい」






部屋はかろうじて物の場所がわかるくらい程度にしか照明が付いていなかった。
声だけを頼りに進んでみると、物だと思ったものが動いた。



「…人?」
「…もしかして…!!」




暗闇に目が慣れてきて、目の前にあるものが見えた。






「行方不明だった二人…!!」
「フィリアさん、コレットさん!!」








そう、エルグレアの修道女フィリアとコレットだった。
二人は壁に身を預ける形で座り込んでいる。











「どこか具合でも悪いのか…?しっかりしてください!!」
「待って、私が回復魔法を……あっ」
「ティア?!」




ティアまでもが二人と同じ様になってしまった。
ただ一人残されたはこの状況がわからない。



「ティア!!しっかりしてくれよ!…なんなんだ?此処に入ったからか?でもオレなんとも無いし…」

「マナの満ちた場所は普通の人にとっては毒ですの!!」


「は?!マナって清らかなものなんだろ?なんで毒なんだよ!」
「聖域以外の場所は殆どマナが薄くなってしまったですの。そんな場所で生活してる人達にとっては此処の空気は綺麗過ぎですの!」







毒に慣れてしまった人間は綺麗なものを受け付けなくなる。
こんなに澄んだマナに触れたことが無い人がいきなりマナに満ちた部屋に入れば体調不良も仕方無い。






「オレは…マナで出来てるから平気なのか」
「でもこのままじゃ三人が危ないですの〜〜」
「そうだ、一旦外へ……」




1人ずつ外へ出そうとまずはコレットを背負う。





その時、床にコツ…と以外の足音がした。









「…やっぱりな。いると思った。此処も風花の神殿と同じだったからな」


「………愚かな生き物を助けるのか?同胞よ」

「…同胞…?そうは思ってないくせに」







気付かなかったわけではない。
最初コイツはこの部屋にはいなかった。












「エルレインから…話は聞いているぞ」
「…良い話じゃないだろ?」




三人を背に庇うようにして声の主の方へ振り返る。
そこにいたのはなんとも冷たい目をした男だった。




「…あんたもディセンダーだって言うのか…?」

「我らが崇高なる目的の障害になる輩とは…お前のことだったのか」







高身長、長いウェーブがかった金髪。
男はゆっくりと近づいてくる。







「…っく!」
「足手まといを抱えて、私に勝てると思うのか?」
「足手まといなんかじゃない!!
仲間だ!



とは言え、確かに状況は不利だ。
三人を庇いながら戦える自信は無い。

リオン達が気付いて来てくれれば…とも思ったが、リオンやリアラもこの中では弱ってしまうかもしれない。









「…教えろ、神殿や遺跡にあるこの聖域みたいな部屋は何の為にある?」


「……まあいいだろう。この星は最早瘴気に冒されている。地中から現れた瘴気はマナを汚染してゆく」


男はふっと瞳に悲しみの色を浮かべた。






「愚かなる人間はマナを消費して生き続ける。瘴気に蝕まれ、なおも消費され続け、マナはどんどん消えてゆく」



マナが無ければ人は生きてゆけない。
だが生きる為にはマナを消費する。




それを防ぐ為に大樹ユグドラシルがマナを生み続けるのだが…



「…そっか…地中から瘴気が出てるなら…大樹も…」



「そうだ、大樹も瘴気に冒されている。最早この星は滅び行く以外道は無い」
「…じゃあ“ディセンダー”って何なんだよ!!何の為にいるんだよ!」














「“ディセンダー”は世界の守護者。神の使いとして、戦う者のことよ」













自分でもない、目の前の男でもない。
少女の声。













「…
リアラ…?」