朝、八時起床。
寝床は雲の守護者雲雀のベッド。
「ん…むぅ…おはよーごじゃーましゅ…」
「おはよう。また君潜り込んだんだね。そろそろ一人で眠れるようになったら?」
「きょーちゃといっしょがいーの」
一人部屋を与えられているにも関わらず、は雲雀の寝床に侵入する。
最初は雲雀自身気付かず、自分のベッドに何かいると思い目覚めた時は驚いた。
だがそれ以来は黙認している。
起床後、洗顔と身支度。
バスルームに行き、専用の踏み台に乗り顔を洗う。
ちなみには低血圧でまだこの時点では目は覚めていない。
ボーッと水を溜めている間にまた眠たくなりそのまま洗面台に顔を突っ込む。
「はひー!!起きてくださいちゃん!!」
危うく永眠しそうになったを急いでハルが水から引き上げる。
水に頭から浸かったお陰で目が覚めたはのそのそと着替えを済ます。
その後髪の毛を直してくれるはいつもハルの仕事だ。
身支度を整えたら、朝食。
「おはよーごじゃーましゅ」
食堂へと続く扉を開け、挨拶をする。
基本食事は皆一緒にと、ボスのお達しがあってか食堂には全守護者とボスである綱吉とヴァリアーの姿。
皆が席を一つずつ間を空けて座っている。
とてとてとがゆっくり歩きながら周りを見渡した。
の席は基本決まっておらず、空いた場所に座れと教えられている。
つまり皆が隣を空けて座るのはに来て欲しいが為なのだ。
「きょーはここっ!」
が本日朝食に選んだ席は骸と髑髏の間。
コレにより皆の非難の目が集中する。
「そんな敗者の目を向けられても困りますね、負け犬さん達」
『コイツ…殺す!!!』(全員)
「おいしーねえ」
『…ま、いいか』
呑気に朝食を食べるの可愛らしさでなんとか険悪な雰囲気は免れた。
朝食後、勉強。
別にはボスになるわけではないが、将来綱吉が不在時がボス代理と言うことになる。
その為の教養を身に付ける為には幼い時から勉強をしなければいけない。
「ちゃんと出した課題はやって来たか?」
「あいっ!!」
ちなみには何の為に勉強をしているかは解っていない。
ただ、勉強で良い成績を出したりするとご褒美が貰えるのだ。
リボーンは餌でを上手く釣っている。
勉強後、手合わせ。
ボンゴレ十代目ボスの弟と言うのは危険が付き纏うものである。
綱吉に恨みを持つ者が幼いを人質に捕ろうとしたり、身代金目当ての誘拐等もある。
なので護身術を身に付けなければならないのだ。
「とぉー!!」
「うわーやられたぁ」
「おい、誰が遊べと言った?コラ」
本日の稽古相手は山本とコロネロ。
が最近お気に入りのヒーローを真似て遊べば、そこはノリの良い山本は付き合ってくれる。
コロネロは基本スパルタなのだが、普段からアルコバレーノと接しているには全然応えない。
正午、昼食。
朝とは違い任務に出ている人間もいる為昼食はいる人間だけでとる。
手合わせの後休憩で京子とハルと髑髏のいる部屋にいたはそこで食べることになった。
「今日のお昼はサンドウィッチですよー」
「はい、君。シーチキン好きだよね?」
「後…食後にデザートもあるから…」
ほのぼのとした昼食を楽しめるのはと女の子だけの特権である。
昼食後、昼寝。
いつもなら寝るのは雲雀の所と決まっているのだが、雲雀だってマフィアなのだ。
任務でいない日もある。
そんな時は枕を持って安眠の地を捜す。
は基本誰かが傍にいれば安心して眠れる、何の物音もしない部屋だとかえって不安になるのだ。
「きょーちゃ…」
眠気が勝り、は近くのドアを開け中に入る。
そしてソファに乗っかり眠ってしまった。
「うおっ!!…なん…お前かぁ!!」
驚いたのは先にソファに横たわっていたスクアーロ。
は見えてなかったのでそのままスクアーロの上に寝転んだのだ。
「…ちっ」
場所を変えようとしたが、それは出来なかった。
ががっちりとスクアーロの髪の毛を掴んでいるからだ。
「…仕方ねえな……(でもこれをベルなんかに見られたらからかわれる…)」
やっと見つけた温もりを握り締めつつ、は夢を見る。
午後三時、おやつの時間。
体内時計でもあるのかと言うほど正確に目覚めたはおやつを貰いにキッチンへと行く。
今日のおやつはザッハトルテ、の好物であるチョコレート菓子だ。
食べる時は座って食え、と言うリボーンの厳しいしつけの元、は食べる場所を捜した。
一人で食べても味気なく感じる、だから人のいる場所で食べるのだ。
「にーちゃ」
「あ、おやつの時間?」
コクリと頷きながらおずおずと入ってくるを快く受け入れる綱吉。
ボスである綱吉は書類整理に追われる日は大抵部屋に篭っているのでの訪問は大歓迎だ。
それにボスの居る所には右腕である獄寺もいる。
「若、何を飲まれますか?カフェオレ、ココア、紅茶…」
「ホットミルク!」
「解りました。待っててくださいね」
のことを獄寺は“若”と呼ぶ。
崇拝する綱吉の弟である為最初からそう呼んでいたが、最近は立派に成長していくを見て心からそう呼んでいる。
「にーちゃ、きょーはおでかけしないの?」
「今日はずっといるよ。最近会談ばっかりで出かけ通しだったし」
「…えへへ」
はにかみながら口いっぱいに菓子を詰め込むを見て、和やかな気分になる二人だった。
夕方、再び稽古。
朝は基礎トレーニングが重点的だが、夕方は実戦形式なトレーニングが主となる。
「極限、本気でかかって来い!!」
「がんばるー!!」
自分のトレーニングにもなるから、と相手をしているのは了平。
何事にも全力で取り組む彼はが子供であっても手を抜いたりなどしない。
傍から見ればじゃれ合いとしか思えないが、結構本気でやり合っている。
普通に了平はを投げ飛ばすし、も本気で突進してくる。
七時、夕食。
朝と同じく、一つ飛ばしに座っているファミリー達。
今度が選んだのはルッスーリアとマーモンの間。
「あらんvvちゃん、これ好きだったわよねぇvあげるわ」
「あーがとぉ」
「僕コレ嫌いだからあげるよ。その代わりそれ貰うからね」
「あいっ!」
ルッスーリアはの好物をくれるし、マーモンはこっそりが嫌いな物を取ってくれる。
コレがばれたらリボーンの雷が落ちることは間違い無いだろう。
夕食後、お風呂。
各自は個室にバスルームがあるのだが、まだ小さいは溺れる危険性があるので誰かと入るようになっている。
けれど、此処で除外されるのが女性陣とXANXAS、綱吉だ。
女性陣は言わずもがな、綱吉はリボーンが
「ブラコンに育っちゃ困るからな」
どっちが、とは誰も聞かなかった。
XANXASは子供の世話等出来るわけもないし、守護者全員から反対の意が挙ったからだ。
「たけちゃーおふろ」
「お、入るかー」
山本の部屋のバスルームは和風仕立てになっており、はそれが珍しくて好きだった。
季節ごとに色々な湯が楽しめるように出来ており、また山本と入るのが楽しいからだ。
「おら、水鉄砲だ。出来るか?」
「しゅごーい!!ぼくもやりゅ!!みゅっ!」
「はははっ、顔にかかっちまったな」
ただ、山本と入ると長湯になる為少々逆上せ気味になるのが難だ。
夜九時、就寝。
「むくちゃ、ほんよんで?」
「おや、今日はアンデルセンですか?少しには難しい気がしますが…」
「もうぜんぶよんじゃったの」
毎晩寝る前には本を呼んでもらうのが日課だが、既に自室の本は読み終えてしまった。
そこで京子やハルに手伝ってもらって、図書室で本を探したのだ。
「あのね、むくちゃがいちばんじょーずなの。だからこれよんでほしいの」
「そうですか、それは光栄ですね」
アンデルセンの童話、“人魚姫”
挿絵はあるが、絵本ではない。
それ故に読み手の読み方によって興味があるかないかに判断される。
「“ああ…足さえあれば…。人魚姫は海の上で出逢った王子に恋をしてしまったのです。”」
「ふんふん」
妙に役に為り切った骸の声を聞きつつ、は眠りに誘われる。
が寝入ったのを確認し、骸はそっと部屋を出る。
深夜十二時。
むくりと起き上がったは自室を出る。
ぼーっとした足取りで向かうのは隣の部屋。
・・キィ
「…やっぱり来たね」
ベッドの横のランプに照らされた顔は雲雀。
読みかけの本を閉じ、灯を消すと入ってきたを抱き締める。
「おやすみ」
「おやしゅみー…」
元々雲雀の部屋は此処ではなかったのだが、夜中移動するの為に移ったのだ。
これが若様の一日。
続・僕らの若様