※まったくもってパラレルです。普通に渚カヲルがいます。
当然のようにチルドレン達と普通に接しています。

























僕らの大切な人






























「は?渚カヲル?誰だそれ」
「フィフスよ」


アスカは眉間に皺を寄せて答える。
どうやらあまり気に食わない人間だったようだ。



「へーオレ見たことない「会わなくていいの!!!」…そう?」
























「それはないんじゃないの?セカンド」












そこに響いた声はとても涼しげなものだった。









「げ」
「初めまして、僕が渚カヲル。君がゼロ・チルドレン―― ?」
「ああ、初めまして」


嫌な顔一つせず右手を差し出してくるカヲルには少なからず好印象を覚えた。
握り替えそうと右手を出そうとすると、それをアスカが拒んだ。




「?アスカちゃん?」
「こんな奴とよろしくしなくていいわよ!」
「酷いなあ、僕はただ君と交友を深めようとしてるだけなのに」
「馴れ馴れしくのこと呼ばないでよ!」





何故にアスカはこんなにカヲルに対して刺々しいのだろうか?
もしかして何か二人の間で衝突でもあったのだろうか?





「落ち着けってアスカちゃん」


はカヲルにつっかかっているアスカを自分の方へ引き寄せ、よしよしと頭を撫でた。
そうされればアスカは大人しくなる事を知っている。









「聞いたとおりの人だね、君」
「聞いた…って誰に?」
「シンジ君さ、君のことを自慢気に話してくれたから。どんな人か僕も会ってみたかったんだ」


シンジの名が出たことでアスカは「あのバカ!!」とシンジを捜しに行ってしまった。
必然的にとカヲルは二人きりになる。









「まるでチルドレンを包む母親…君は本当はゼロ・チルドレンなんかじゃないんだろ?」
「……どういう意味だ?」
「そのままだよ、
“マザー”
「……何処で漏れたかなあ……」





そう、ゼロ・チルドレンは存在しない。
それは本来の役目を隠す為の呼称。






の本来の役目はエヴァに乗り、使徒と戦うことではない。

エヴァに乗るチルドレンを慈しみ、愛する“マザー”。





「“マザー”はチルドレンを守る存在…。君は予備なんかじゃない。むしろ核的存在だ」
「極秘って訳でもないが…アスカちゃんが此処にいなくて良かったぜ。この話をするためにわざわざシンジを引き合いに出したな」
「彼女の性格を読んだわけじゃないけどああも簡単に行くとは思わなかったよ」
「それで、何が望みだ?」




「そうだなあ……まあただ僕も愛されたかった…ってことかな」


「…?」







カヲルはに一歩ずつ近づく。
は動かず、ただ立っていた。








「僕もチルドレンだからね…マザーに愛されたかったんだよ」


正面から見たカヲルの表情は笑ってはいるが、今にも泣き出しそうな子供の顔。










は無意識にカヲルを抱き締めていた。










「……やっぱり君はマザーなんだね」
「その名で呼ぶな…大体不本意なんだよ。男のオレが“マザー”って呼ばれるのは。…だ、カヲル」
「…君…ああ、君は…暖かい」






つくづく思う。
どうして、こんな幼い彼らが戦わなければならないのだろう。
そして、どうして自分は何も出来ないのだろう。






支える、と口では言える。
だが戦場に出るのは彼ら自身、自分ではない。

それならせめて痛みだけでも分け合えれば良いのにと思う。










急に自分にかかった体重に気づき、カヲルを見下ろすとすやすやと寝息を立てていた。
どうやら張り詰めていた気が緩んだのだろう。
はカヲルを背負うとネルフの仮眠室へと向かった。


























「…ん…」



カヲルは目を開けた。
いつの間に寝てしまったのだろう。そんなことを考えるほどに熟睡していた自分に驚く。




「起きたか」
「…君。僕は眠っていたのか?」
「二時間くらいな。急に寝るから驚いたぜ」





ベッドの傍らに座るの傍には重なった本の山と空になったマグカップ。
それらから自分にずっとついていてくれたのだと判るとカヲルは妙に嬉しくなった。



「どうしたよ?」
「やっぱり君は“マザー”だよ。自然と行動がね」
「嘘ぉマジかよ…。せめてオトーサンにしてくれよ。そんでカワイイ嫁さんもらう」
「じゃあ僕がなってあげようか。僕としては旦那の方がいいんだけど」
「…話聞いてた?」







バタバタと廊下に足音が響く。
ん?と扉を開けようとが近づくとそれはすぐに開いた。






君!!」
「シンジ?!どうした?」


入ってきたのは肩で息をするシンジ。
の姿を見つけるとほっとしたような顔になる。


「カヲル君と一緒にいるってアスカに聞いたのに何処にもいないから…。っていうかアスカがなんでか僕を怒るんだけど」
「アンタがバカだからでしょ!!」
「うわあ!!」



間髪入れずアスカが入ってきた。
シンジは驚いての背中に隠れた。



「ちょっとにくっつかないでよ。元はと言えばアンタがね…ってフィフスがなんで此処にいるのよ!!」



シンジに詰め寄るつもりで近づいていけばその後ろのベッドにはカヲルの姿。
アスカは益々ヒートアップしてしまった。





「今日は折角と二人でゆっくりしようと思ってたのに、どうしてあんた達が出てくるのよ!」
「僕はただカヲル君に君の話をしただけじゃないか…!」
「僕も君と話がしたかっただけさ」
















自分を挟んで言い合う三人を見ては密かにこんな事を考えていた。











『カヲルが長男で一番上だとして、レイがその次かな。次女アスカちゃんに末っ子シンジか…』



力関係が見えてくるような兄弟構成だ。









「どうしたの…?」



騒ぎに気づいたのか、レイが部屋の外から顔を覗かせた。
がおいでおいでと手招きをすればレイは素直に近寄ってくる。





「レイは静かで良い子なんだけどな、もっとこの三人みたいに思うこと言っていいんだぞ?まあこの三人は少し行き過ぎだけど」


その言葉に三人がピタっと固まった。









「思うこと…………



………今晩と寝てもいい?」


レイの爆弾発言に以外の人間が表情を崩した。


「それくらいいいぞー。またオレんち来るか?レイ何食べたい?」
「……海老グラタン」
「OK―♪じゃあ帰りに材料買うか。……そこの三人、もう言い合いしないなら来てもいいぞ?」




その言葉に一斉に顔を上げる三名。



「「「しない!!!」」」













母は最強なのです。































〜オマケ〜






「めっずらし〜…リツコ、あれあれ」
「あら、随分ほのぼのとした光景ね。五人揃って帰るなんて」
「アスカとカヲル君ってそんなに仲良くなかったのにねえ〜。レイも自分から輪に入ってるし、何よりシンジ君が積極的だわ」
「皆“お母さん”が好きなのね」




四人の子供はお母さんが大好きなのです。