いくらここがオレの居た場所だったとしても


やはりオレにはオレの世界がある



けれどオレがここに来た意味は?
為すべきことがあるからじゃないのか?





























ある日のこと、目覚めてみれば廊下から長屋から騒がしく
何があったか、近くを通りかかった一年は組のトリオを捕まえて聞き出した。






「おい、なんかあったか?」

「あ!さんおはようございますー」
「いやね、なんか六年は組の善法寺伊作先輩が見知らぬ女の人を連れてきたんすよー」
「でもその人とっても珍しい格好してるらしいんで見に行くとこなんですー。さんも行きます?」






…オレみたいな人が来ちゃったってことかな?


その人がもし、“オレと同じ”なら



もしかして関係があるんだろうか。












チリッ





――――ん?






急に胸に走った痛み。





「どうかしましたー?」

うつむいたオレの顔を覗き込むようにする三人。

急に現れた胸の痛みに戸惑ったオレは取り敢えず三人には先に行ってもらうよう伝える。






「―…なんだったんだ?」










「…先輩」



部屋の前で突っ立っていると、背後に兵助が立っていた。
振り返ると、いつも眼力の強い目元が下がっていた。





「どうした?兵助」

「…気持ちが…悪いんです…。すごく、臭いし…吐き気がする」

「は?!大丈夫かお前!食あたりか…?よく見りゃ顔色も悪いし…」

「違う…違うんです。…学園中が嫌な臭いで充満してます…」


足元もおぼつかない様子の兵助は、そのままオレになだれ込んできた。
取り敢えず、横にしてやろうとオレの部屋へ戻る。








「水…汲んでくるからな」




兵助を横にして、オレは飲水と手ぬぐいを濡らすために桶に水を汲みに行くことにした。
こんな状態の兵助を一人置いていって良いものか迷ったがすぐ戻ってこようと部屋を後にした。






「臭い…って言ってたな。オレは何もわからないけど…」



兵助の言う“臭い”ってやつがオレにはわからなかった。
が、確かにオレも不調は感じている。


先ほどは胸に一瞬だけ感じた痛みが、少しずつ強くなっている。



オレと兵助だけ…?他にもこんな風になった奴はいないのか?









井戸へ行くと、紫の装束がしゃがみこんでいるのが見えた。
近づくと、それが田村三木ヱ門だということがわかった。




「おい、三木ヱ門どうした?」

「……せんぱい…?ハア…すみません。何故か頭が痛くて…」


こちらも兵助と同等に青い顔をしている。
おいおい、なんだよ忍術学園には流行病でも流行ってんのか?




「つかまれ、お前も取り敢えず横になっていたほうが良い」
「すみませ…。進めば進むほど、目眩がしてきて…」





三木ヱ門を担ぎ、オレは来た道を戻る。
片手には水を汲んだ桶を持ち、片手は三木ヱ門が落ちないように支えて








先輩…ご迷惑を…おかけします」
「迷惑なんかじゃねえよ。けど…一体なんで」




再びオレの部屋へと戻ると、兵助の横に同じく青い顔をした仙蔵と藤内がいた。


「お前ら…も具合悪いのか?」
「あ…か。すまないな。朝から胸のムカつきがひどくて…」
「僕も…息苦しいんです…。こんなこと…今まで無くて」



おいおい…どうしよう。
このまま横にしたからってこいつらの体調が良くなるわけじゃない…。
全員医務室へ連れていくか…いっそ新野先生を連れてくるか。




「…言っておくが、今医務室には行かないぞ」


「え?」


「他は知らんが、私と藤内は医務室へ近付くほど気分が悪くなった」
「…同じです…。俺も…医務室へ向かう途中だったんです」
「僕も…けど、進む度頭が…っ」





「なんで皆医務室に…?」





「伊作が拾ってきた、“アレ”がいるから見に行こうとしたんだ」





















四人共授業を受けられるような状態じゃない為、せめて同級生達に先生へ言付けてもらおうと食堂へ向かう。
ついでに四人の朝食を持っていったほうが良いだろう。



食堂へ行くと、留三郎と目が合った。
オレの姿を見つけるなり、詰め寄ってきた。




!!…伊作が…」

「ああ聞いてる。見知らぬ女性を連れてきたらしいが…どんな人なんだ?」

「……それが、まだ伊作と話せないんだ。なんで伊作がそいつを連れてきたのか解らないけど今医務室には入れなくて」

「…なんだって?」

「いくらあいつがお人好しだからって…部外者をホイホイ招き入れるなんてするわけないだろうし」

「…連れてきたってことは、何か忍術学園と関係があったからか。それとも…」







何か嫌な予感がしたオレは、仙蔵達のことを伝えると足早に食堂を出た。



まだ姿を見ていない生徒達も気になる。
しかし、今は弱った四人が心配だった。












「皆!だい…じょ
うぶ…




オレの声は空気に消えていった。




ぐったりとしている四人の傍に、




まるで状況なんて全然わかっていないと言った様子の










女子高生が座っていたから。