後少し
そう思って耐えてきたっていうのに
なんてことしてくれたんだ、お前は
我慢出来なくなるじゃないか
「きゃああああああ!!!」
異常な叫び声。
隣にいたハチと兵助と顔を見合わせて駆けつけてみればそこは用具室。
三郎と雷蔵も追いつき、中を覗いてみるとそこにはあの女がしゃがみこんでいた。
「た…たす…助けて!!三郎!」
三郎の姿を見るなり、しがみつく。
あーあ、三郎(´・ω・)カワイソス
女の着物は乱れ、手には切り傷があった。
「あ…あの人が…わ…わたしを…」
震える指が指したのは、用具室の奥にいた人影。
「……先輩…?」
兵助の声がか細く聞こえた。
先輩はただ俺達を見据えていた。
「わたしが邪魔だって…襲いかかってきて…。抵抗…しようとしたら刃物で…」
「先輩…どうして…」
三郎は女を雷蔵にあずけ、ゆっくりと先輩に近づく。
その時女が口元に笑みを浮かべてたなんて俺しか気付かなかっただろう。
「言ってくれれば、私が殺ったのに」
そしてその笑みが消え去る瞬間も俺しか見ていなかった。
「えっ…」
「仕方ない、こうなったら計画を早めるか」
やれやれと言った感じに兵助が頭をかく。
「いいっすよね、先輩」
ハチの笑顔が生き生きとしている。
「もう、皆。ほんとは期待してたんだろ?」
雷蔵は女の体を捻り上げた。
「い…痛い…痛いよ!!雷蔵、やめて!!」
「黙ってくれる?」
顔には笑みを浮かべて、けれど声には温度を感じさせない。
雷蔵って実は拷問が得意だから怖いよなー。
「こんなことしなきゃ、後三日は生きてられたのにな」
「…さ…ぶろう…?」
「気安く呼ぶな。おぞましい」
三郎の手が彼女の頬を打った。
今だ信じられない、という表情を浮かべた女に俺は満面の笑みでこう言った。
「自滅、ってこういうことを言うんだろうね」
五月蝿いから、と薬で気絶させ裏々々々山まで運び出す。
量はほんの少ししか使ってないのにまだ起きやしない。
「おい、もうこれくらいで良いだろう。適当な所で放っておけ」
「え!?殺らないんですか!?」
山の奥深くで女を適当に転がす。
殺る気満々だった俺達は先輩の言葉に拍子抜けした。
「どうせ、放っておいても山から出られないだろうし…出られたところでなんの問題もない。
それに、オレはお前らにこんな事で手を汚させたくないんだよ」
「先輩…素敵っ!」
「三郎!先輩に飛びつくな!」
「まあ…ここらへん山賊も出るし狼もいるし…」
「じゃあ、帰ろっか」
ああ、名前も知らない馬鹿女
忍術学園に来なければ
先輩に近寄らなければ
もう少し長生き出来たかもしれないのにね
その後、体育委員がマラソン中に
どこかで見たような柄の小袖の切れ端が木に引っ掛かっていたと言っていたが
それがなんなのか、もう俺達は覚えちゃいなかった。
―…ああ、やはり戻ってこられましたか
―どうして!!どうしてわたしが殺されなきゃいけないのよ!!
―はて、どうして?と申されましても…
―わたしは逆ハーにしてって言ったのに!!
―…貴方のその言葉、私も調べてみましたが……それは空想の物語の中でのみ通用することですよね?
―…何言って…
―だって貴方が受けた痛みは本物でしょう?夢じゃなく、現実でしたでしょう?
―……っ…!!
―現実で“逆ハー”という設定を持った人間を、貴方はみたことあるんですか?
―……さ、詐欺よ!!
―詐欺、と申されましても。そもそも貴方、仮死状態でここへ来ていただけなんですよ
―へ…?
―息を吹き返せば現世に戻れましたが…此処へ戻ってきたということは完全に死んだということになります
―…そんなっ!!嘘よ嘘!!わたしを元の世界へ返して!!
―ここへ来た亡者は皆そういうんですよね。さて、閻魔大王お裁きを
―君ほんと仕事人間だなあ。まあいいか…。ワシが貴殿に下す判決は孤地獄!!己の欲望のままに他者を貶めるなんと傲慢なことか!!
―私自ら準備いたしましたので、存分にご堪能ください
―ちょっ…ちょっと待って…嫌…イヤアアアアアアア!!!!
―ふう。ところで鬼灯くんどんな地獄にしたの?
―男性に囲まれるのが好きな方だったようなので思う存分囲んで差し上げました
―うわー…(きっとえげつないんだろうなあ)
―さて、仕事はまだ終わってませんよ
―わかった!!やるから!金棒振り回さないで!!