の月命日で私と文次郎は奴の眠る地へと出向いていた。


毎月、かかさず我々は奴の元へと足を運ぶ。
奴の好きだった桜の樹の下に…は眠っている。





何故か、ここの桜は春が来ても咲く気配を一向に見せなかった。
と同じく、この桜も時が止まってしまったのだろうか。



それでも蕾はついていたのだからいつかは咲くのだろうと思いながらたどり着いた場所。










そこであるまじき光景を目にした。












樹の下で誰か眠っている。
いや、それは珍しいことではない。





しかしその人物が重要だった。
















何故お前がいる?







咲かなかった桜が満開だった。








ああ、これは桜が見せた幻なのか?
私達があまりにも奴の死をふっきれないでいるから、その想いが形になったのか?








しかしよくよく見てみると面影はだが…顔立ちが大人びている。

やはり他人の空似なのではと思った。




桜を見て彼は涙を流した。

やはり、なのか?


隣の文次郎も同じことを考えていたのか、表情がこわばっている。




このままここでじっと見ていても埒があかない。




もし、これが誰かが変装していたとしたら
もし、これがの死を知っている奴の謀だったとしたら


もし…彼がなら






どちらにせよ、確かめない事には前に進まない。




































彼の前に姿を現し、間近で見てみたが…やはり似ている。


文次郎はまだ警戒しているようだな。しかし、忍たるものそれが当たり前。
ましてや…死んだ友と同じ顔をした奴が目の前に現れれば余計にだ。






話をしてみれば、いくつか不思議な点があった。


彼は夏だと言うが、今は卯月、ようやく暖かくなった頃合だ。
そして年の頃を20と言う。



そして私達が出てくる前、確かにこちらを見たのだ。
気配は消していた…いや、彼の涙を見た瞬間気が抜けてしまったな。




名を聞いてやはり動揺が隠しきれなかった。



 



その名は、我が友と同じもの。






彼は自分のことを話した。
正直、普通なら眉唾ものだろう。

“へいせい”という時代とか、目が覚めたらここにいたとか。


信じるなんて馬鹿げている。


けれど、節々にを重なる部分が多すぎて





困ったように笑う顔や
妙に物わかりがいいところや
どんな状況でも落ち着いているところや




…いつの間にか、疑うことをしなくなった。










人は死ぬと輪廻を巡ると言う。
そしていつの日にかまた生まれ落ちるのだと。



もし、彼が



私達の友だったなら






…いや、非現実な話はやめよう。



















私と文次郎は彼を忍術学園へと案内することにした。


あの学園一忍者している男がすんなりと頷いたのには驚いた。
やはり奴も彼がと重なって見えるのだろうな。




もし、彼がに変装して忍術学園に危害を加える輩だったら…
その時は我々は手引きした責を背負って命に代えても、彼を殺すだろう。





だけど、なぜか



無条件に彼は“大丈夫”と思う自分がいる。















「もう着きますよ」
「結構歩くね。二人は慣れてるみたいだけど」
「まあ、授業でもよく来ますしね。…でもさんも全然疲れてないように見えますが」

「オレ、小さい頃からじいちゃんばあちゃんに育てられたからな。山育ち」




も、身寄りは祖父母だけだった。
これが間者とは思えない。



亡くなった人間に化けるなんて、そんな不確実な方法をとる忍がいるなんて思えない。



けれど…








「立花君、眉間」
「え?」



「難しい顔していたよ」
『難しい顔してるぞ、仙蔵』






…っ!




「すみません、考え事をしていたようで」
「ううん、折角綺麗な顔…男に言われても嬉しくないよなー」







『美人って言うのは仙蔵のことを言うんだろ。ま、オレに言われても嬉しくねーだろうけど』









……私が私でなくなりそうだ。














忍術学園に帰り着いた私達は取り敢えず学園長先生の所へ向かった。
彼のこれからを相談しに、だ。





その道中、地面にぽっかりと空いた穴があった。
また喜八郎か…。掘るのは良いが、ここらに掘ると必ず





「たすけて〜〜…」





伊作(保険委員共)が落ちるんだ。








中を見ればトイペまみれになっている伊作がいた。

六年にもなって、四年の罠にかかるな。まったく、世話の焼ける…。



「おい、文次郎。出してやれ」
「なんで俺が!?…しゃーねえなあ…」


文次郎が穴に近付こうとしたその時、






「大丈夫か!?」





彼が穴に駆け寄った。
そうか、私達にとっては日常茶飯事だが彼には“穴に人が落ちている”状況はそう無いだろうからな。



手を伸ばし、伊作を引き上げる彼。

伊作にも説明せねばな…ここで彼の顔を見たらまた…




出てきた伊作を見て、彼が呟いた。





「伊作…?」







なんだと…?