学校へ行く途中、トラックに轢かれて
あ、死んだと思ったら真っ白な世界にいて
「あ、間違えた。…どーしょっかなあ。少し早いんだよね…」
なんだかわけのわからないことを言われて
「少し待つからどっか行ってみる?」
そんなことを言われたから
ああこれがトリップ夢ってやつねと理解し
だったら落乱がいいって言って
でも傍観とかは嫌ってちゃんと確認して
「…?よくわかんないけどそこにすれば良いんだね?じゃあどうぞ」
ちゃんと逆ハーにしてね!!って念を押してわたしの意識はブラックアウト
気が付けば道端にいて
ここはどこだろうと考えていたら善法寺伊作がいた
やった!いきなり六年と会えるなんて!
嬉しさのあまりいっぱい喋っちゃったけど、彼は笑顔で聞いてくれる
これから学園に行ったら誰と会えるのかしら
六年も楽しみだけど早く五年生に会いたい
わたしの本命は鉢屋三郎くん
見分けがつくかしら?
つくわよね、だってわたしは逆ハー主人公だもの
学園長先生にもここに置いてもらえるようにお願いしたしこれでひとまず学園にはいられるわね
でもなんで食堂のお手伝いさんじゃなかったんだろう…
大概の夢小説では食堂のお手伝いか事務員として働くのに…
まあいっか
ところで今伊作くんが着替えに行っちゃったんだけど…少しくらい外を歩いてみたい
いいわよね?だってわたしが動かなきゃストーリーが始まらないもの
適当に歩いていると誰かのうめき声が聞こえる部屋にたどり着いた
中を覗くとそこには立花仙蔵くんに久々知兵助くん、田村三木ヱ門くんや浦風藤内くんがいた
これは一気にお近づきになれるチャンス?!
わたしは障子を開けた
「大丈夫?どこが苦しいの?」
「…っ…うう」
声をかけるも皆異常な苦しみ方で誰も返事をしてくれない
このわたしが来たって言うのにどうして治らないの?
大体こういうときって、不思議な力とかで治してあげちゃったりするんじゃないの?!
そんなことを思っていると障子が開き、見たことのない人が立っていた
え…?
誰…?
生徒の制服ではなく、小松田さんが着るのと同じ色の制服を来た人
こんな人いたっけ…?
あ、もしかして新キャラとか?
その人はわたしを見て目を見開いた
すぐさま伊作くんが追いつき彼と話している
「ね、ねえ伊作くん。皆具合悪そうだよ。診てあげて」
そう言ったわたしに冷たい目が向いた。
「アンタ、人の部屋に勝手に入るなんてどういう教育受けてるんだ?そうじゃなくても、勝手に学園内を歩き回るな」
「な、なんで…」
「アンタの住んでいる所じゃ、家に他人が入ってきて勝手に歩き回るのか?そりゃ、物騒なところだな」
「わ、わたしはぁ」
「伊作、お前なんて言って出てきたんだ?」
「ぼ、僕は待っててって言ったんだけど…」
「言われたことも理解出来ないのか?何故、待たなかった?犬でも出来ることだぞ」
「…な、なんでそんなに言われなきゃいけないのよぉ」
「五月蝿い。とにかく病人がいるんだ。出て行け」
どうして…こんな風に言われなきゃいけないの!?
わたしは逆ハー主人公なのよ?
なんでそんな冷たい言い方するのよ
けれどあまりにも冷たい目に背筋が寒くなって縋るように伊作くんに聞いた
伊作くんなら優しいからきっとこう言ってくれるはず
彼から出るであろう返答を待つ
“ごめんね。後であいつにはちゃんと言っておくから”
「ねえ、君年いくつ?」
慰めじゃなくて質問?
ま、まあ良いけど…だって伊作くんがわたしに興味があるってことだし…
「へ?17だけど…」
「どこに脳みそ落としてきたの?」
今…なんて…?
聞き間違いよね…?
「…い…伊作くん?」
「勝手に名前で呼ばないでくれるかな?僕、頭悪い人嫌いなんだ」
……どういうこと!?!
―ねえ、最近変わったこと聞く人多いね
―ああ、あの“逆ハー設定”とか“傍観は嫌”ってやつですか?
―そうそう、何かの流行り?
―さあ
―よくわかんなくて、時間も無かったし聞き返さなかったけど
―良いんじゃないですか?望みの場所へは行けてるんですから。それに準備が整い次第始めますし
―そうだよね。あ、だから君ウキウキしてるのか
―はい。私が最も楽しみにしている仕事ですから