「人の子よ我が配下に下れ――――!!!」
は己の刀を手放した。
十七鬼 この心は渡さない
「!!どうした!おい!!」
「反応が無いな…瘴気に当てられたか…?」
「そんな…!!!」
昌浩、紅蓮、彩W…………
ごめん、オレ呪いが解けるかもしれないって思ったら急に“生きたい”って思った。
今まで“せめて短い命なら精一杯昌浩の為に使いたい”とか言っておいて、
生きられるかもしれないと思った時、それが嬉しかった。
ごめん。
はフラリと立ち上がり、窮奇の前まで歩み寄ると跪いた。
「!!何をしてる!!」
「…嘘だろ?!」
「フハハハハ!よい心がけだ!さあ、我が新しき僕よ、あやつらを片付けてしまえ」
窮奇の言葉に、は立ち上がり昌浩達の方へと右手を向けた。
「、やめてよ!!ねえ!」
「おい!目覚ませ!!」
「……」
は無表情で三人の瘴気の檻に近づく。
そこで六合はあることに気がついた。
「騰蛇、昌浩。目を閉じろ」
「え…?」
「何言ってんだ、六合…」
「を信じろ」
何故、六合がこんなに落ち着いているのか解らない二人は取り敢えず言うとおり目を閉じた。
「降り注げ、白色の風。我の声、届いたなら浄化の輝きを持って穢れを打ち払え。“聖光白舞”」
眩いほどの光が部屋中を照らす。
あまりの眩しさに窮奇は雄たけびを上げた。
光が止むと同時に三人は目を開け、目の前の光景に驚いた。
むせ返るほどの瘴気が跡形も無く消え去り、窮奇はもがき苦しんでいる。
そして目の前にいた青年だったはずのは、いつもの小さな姿に戻っていた。
「ぐぅ…おのれ…図ったな…」
「いっただろ?オレの主はしょうがいただ一人だと」
先程六合が気づいたのは、の唇の動き。
『目 を 閉 じ ろ』
は三人を助ける為の芝居をうったのだ。
「昌浩、あとはまかせた――…」
フラリとの体が傾き、六合に支えられた。
元の姿に戻ったということは神気を使い果たしてしまったということ。
その分の代償として、もうに体力は残されていなかった。
「…!!」
「眠っているだけだ」
昌浩はそれを聞いて安堵の表情を浮かべ、窮奇に立ち向かった。
「…どこまでも我の邪魔をしおって……こうなったら全員我の血肉となれ!!!」
の術によって動けなくなっていた窮奇が無理に術を解こうとした瞬間、上から光が差し込んだ。
「な…!?」
光の正体は輝く剣だった。
上を見上げればいつもの不機嫌顔を浮かべた青龍の姿。
「早く受け取れ!晴明が鍛えた降魔の剣だ!」
昌浩は慌てて剣を握り、それを窮奇に突き立てた。
「雷電神勅、急々如律令――――!!!」
聖なる雷が剣に落とされ、窮奇の身を焦がしつくした。
は自分の身に一定の間隔で与えられる振動で目が覚めた。
「…ん」
「起きたか」
目覚めると広い背中があった。
見上げれば赤い髪が見える。
「…紅蓮?」
「お前、ずっと眠ってたんだぞ。体はどうだ?」
「いや、とくには…昌浩は?!」
「、大丈夫?」
元気そうな昌浩の姿が目に入り、ようやく肩の力が抜けた。
昌浩の手がの頭に伸びる。
「ありがとう、助けてくれて。でもあんまり無茶なことはしないでよ」
「…そのことば、そのままかえす」
そう言えば、辺りに笑い声が響き渡った。
ああ、ようやく悪夢は終わったのだ。
さて、忘れちゃいけないことがもう一つ。
晴明は話があると昌浩を呼び出していた。
なんでもある家の姫様を預かることになったので紹介をするとのことだ。
オレはその姫を晴明の部屋まで案内する役を仰せつかり、姫が待たされているであろう部屋へと向かった。
「しつれいします」
「はい」
なんとも可愛らしい声が中から聞こえた。
鈴を転がすとは正にこのことだろう…なんて考えていたが、よくよく思い返すと何処かで聞いた声だ。
戸を開けると其処には正に目を見開く出来事が。
「久しぶりね、」
「…昌浩、おどろくぞー…げんきそうだね…。
――――彰子」
さあて、昌浩の絶叫まで後数分。