たまたま今日は部活が休みで、スポーツ用品店に出向いた。
新しいグローブとか、バットとか色々見て回ってふとテーピングテープが切れてたことを思い出した。



「お、新商品…」



俺の手とほぼ同時に横から手が出てきた。


















第六球 ファールかホームランかは境界線によります



















「あ、ごめん」
「い、いやこっちこそ…」



戻っていく手を目線で追っていくと、其処には「爽やか」という代名詞が似合いそうな男がいた。
身長は俺とあんまり変わらない(←177cm)
混じりッ気の無い黒髪は天使の輪が見え……って何観察してんだ俺!!!!



「なーこれ使ったことある?オレ初めてだから使い心地わかんねーんだけど」
「あ、俺もこれは初めて見たから…」


初対面の俺にも気兼ねなく話しかけてくる。
俺も普通に返事が出来た。
言葉だけなら馴れ馴れしいかもしれないけど、表情が相手に警戒心をまったく持たせない人好きのする笑顔だった。



「そっかー。んーオレが使うわけじゃないからあまり下手に手出せないなー」
「頼まれたのか?」
「いや、オレ野球部マネジだから」



てっきりプレイヤーだと思ったのにそいつはマネージャーと言った。
運動出来なさそうには見えないけど…と、俺の視線で何を言いたいのか悟ったのかそいつは笑った。



「変わり者って思った?」
「え、いや…。……少し」
「だろーなあ。ウチの奴等も言うけど…オレは楽しいよ」



きっと本当にそう思ってるから言えることなんだろうな。
表情が嘘を言ってる顔じゃなかった。





「あ、悪いな引き止めて。やっぱオレいつものにしとくわ。無難だし」
「…な、なあモノは相談なんだけど…」



どうにかして、もっと話してみたいと思った俺の口から言葉が勝手に出ていた。



















「あっれー?準さんメールきてますよー」
「っ利央、勝手に見るな!」



部室で着替えてる間に机に置いていたケータイが光る。
利央が目ざとくそれに気がつきケータイに近寄ろうとする前にダッシュでケータイを拾う。



「ちょっなんすか!人が折角…」
「良いからとっとと練習行け!」



渋々部室を出て行く利央を確認した後、メールボックスを開くと其処には先日会ったアイツの名前。


  件名:練習中ゴメン!』




口元が緩むのが抑えられず、本文を読む。


『あのテープ結構良いな!明日にでも残り返すから、またあのスポーツ用品店で待ち合わせで。
でも貰うだけじゃワリーからそん時何か奢る!あんまり高いもんは無しな』



これで、また会える。



















「俺がそれ買って、それ貸すってのどう?」
「え…でも消費するもんだし悪いだろ。それにお互い初対面だし、オレそこまで図々しくないぞ」
「高瀬 準太!二年だから」
「え、おお…。 、同じく二年」
「だって元々俺これ買うつもりだし、一回分くらい別にどうってことないって」
「でもよー…」
「はい、決めた!じゃあ俺これ買ってくるから。は今日は取り合えずいつもの買っとけよ」
「お、おう」















こうでもすれば、テープを貸し借りするのにまた会える。
しかも連絡先も交換出来る。



ちょっと強引だったかな、とも思いつつ俺はテープを買いに渡す。


「…じゃあ遠慮なく。メルアド交換してくれる?返す時連絡するからさ」
「解った、じゃこれ俺のメルアド」














お互い部活があるから会えるのは少しだけだけど、明日は幸いにも土曜日。
練習はあるけど、丸一日じゃないから。







『件名:了解   十二時に練習終わるからその後でも良いか?昼飯食おうぜ』




送信完了。