オレの聖域、図書準備室。


折角の昼休みはいきなりの慌しい訪問によって潰された。

本来なら注意すべきなんだけど、彼らを見てオレが最初に掛けた一言は











「おー、もててるね。君達」










と、いう場違いな一言。










廊下では彼らを追いかけてたであろう女子の声。
そしていくつか持たされた可愛らしい包みの数々。





棒読みでお疲れーと声掛ければ帰ってくるのは心底疲れたという様子の返事。

まあそれはそうだろう。



なんせ、朝から昼休みまでずっと女子に追い掛け回されているのだから。











Sweet Days















「…ッハア…最近のGirlsのPowerはありえなくないか…。何処に行っても待ち構えてやがる」

「しかも机は下駄箱までいっぱいだよ…。さすがに下駄箱に食べ物入れないでほしいよね…」

「某…甘味は好物でござるが…女子が…怖いでござるぅぅ…」








そう、今日は乙女の決戦日バレンタイン・デー。



ボロボロのこの三人は大変おモテになるようで、朝から追い掛け回されっぱなしである。













「おーおー、しかし大量じゃねえか。今のとこトップは…政ってとこか?」
「Ha!当然だろ?俺がこいつらに負けるわけねえ」
「俺様は断ったんだよー。気持ちに応えられないのに受け取れないジャン」




あ、さりげなく政に牽制してるのか?それは。

少し政の眉間に皺が寄った。






「しかし、それでも貰ってくれと言っておるのだから気持ちだけでも頂けばよかろう」





おお、幸がまともな事言ってる。お兄ちゃんなんだか嬉しいよ。兄馬鹿じゃないけど。






「あのね、旦那。それで済めばいいけど変な期待させちゃうかもしれないでしょ?だから俺様は受け取りません。それに…」


言いかけて佐助が口ごもる。









そしてオレの方に視線を向けると








「欲しいのは本命からの一つだけだし」










…何故それをオレに言う??

今は幸と討論してたんじゃないんか?






「おおー佐助のその心意気、感動致す!それで本命とは誰なのだ?」


幸が目を輝かせ佐助を見る。

すると佐助はニヤリと笑ってオレの方へ歩み寄ってくる。






「ねえ、先生?俺は先生からのが欲しいんだけど」






女子も卒倒するくらいの笑みを浮かべながら、耳元で囁く佐助。

背後で政が思い切り睨んでるんだけど…。





「てめえ!兄貴から貰おうなんて図々しいこと考えてやがったのか…?!」
「なーんで竜の旦那が出てくるのよ。先生が誰に渡すかは自由じゃない?そろそろ兄離れしたら?」
「Kill You!」

「あーはいはい。そこまでな」




火花を散らしあうなら外でやれ。ここは図書準備室であって闘技場じゃねえんだよ。






「某も先生から欲しいでござる!!」


うお、増えた。

佐助と政もすっごく歪んだ表情してるな。





「黙っててめえはその貰ったチョコ食ってろ!」
「それは竜の旦那も一緒でしょ?そんなに沢山貰ってるんだから早く食べてあげなよ」
「これも勿論頂くが、某が本当に欲しいのは先生からのチョコレートだ!!」




あーあ、なんか収集つかなくなってきてるんだけど。







一応オレも用意はしてるんだよ?チョコっていうか、まあトリュフなんだけど。ちゃんと全員分ね。

どうせ毎年世話になってる人(主に信玄や謙信)にはあげてるからついでにこいつらのも作った。




ダダダダダダ



ん?





バン!!!!





「何をしている!!お前たち!」






飛び込んできたのはかすがだった。
肩で息をしてるところを見ると相当走って来たのか…?





「うげ!かすが!!」
「馬鹿!!大声出すな!俺達が此処にいるのがばれる!」


「こんな所で…先生の迷惑だろう!逃げるのなら別の場所に行け」


ほんとにねぇ。











「まーまー、かすがもちょっと休憩してけよ。結構疲れてるんだろ?」
「わ、私は…!……先生、コレ!!」


かすがの手には可愛らしくラッピングされた包み。



「…え?オレにくれんの?うわーありがと、かすが」
「////い、いえ…日頃の感謝の意を込めて…」


見ると指に数箇所絆創膏が見える。

もしかして…これを作ってくれたから怪我したのか?



うっわ、何この可愛い子。すっげー愛しいわぁ。






「本当に嬉しい。そうだかすが、オレもこれ渡そうと思ってたんだよ」
「これは…!もしかして先生が?」
「おう。見た目ちょい悪いけど味は保証済みだからさ。受け取ってくれ」
「あ…ありがとうございます!」




「先生!!ずるいでござる!!」

「かすがにだけ?!」

「それは見過ごせねえな!!」




こういう時だけ団結するんだから…。全く、そんなにモテてるくせにまだ欲しいか(←分かってない人)




「あるって。ほら、政に幸に佐助の分」



渡したら急に表情がころっと変わるんだから…可愛いもんだよな。

でも自分のと他の二人が同じ袋だと気づくと表情一瞬曇ったな?




「ちぇ、義理かぁ。ま、その内本命貰える様になるけどね」
「へ、言ってろ」
「美味しいでござる!!」
「せめて家に帰るまで待てないのか…?」




まあなんだかんだで喜んでもらえたかな。

後はチカとナリにも渡さなきゃな。
多分あの二人も逃げ回ってその内此処に避難してくるだろうけど。











あ、そういやアイツって今日学校休みじゃなかったっけ?








こういう騒がしい日は体調にさわるからって来てなかったような…。












その後逃げ疲れた元親、元就や、慶次までもが図書準備室にやってきて昼休みは終わった。





















放課後、オレは手にある包みを渡すべくある生徒のマンションに来ていた。








「よ、具合どう?」

「…大丈夫だけど…どうしたの急に?」




ラフな格好で出てきた半兵衛は目を白黒させていた。
いきなりのオレの訪問にさすがの半兵衛も驚きを隠せないらしい。






「今日、学校来なかったからな。これオレの授業で出したプリント」
「ありがとう…それだけの為にわざわざ…?」
「うん、後ついでにコレ渡そうと思ってな」





差し出したのは小さな紙袋。





「オレが作ったので悪いけど、一応バレンタインのプレゼントだ」
「…え?!」
「どうしても今日渡しときたかったからさ」
「あ、ありがとう…。すごく…嬉しいよ…」
「そっか。喜んでもらえて何よりだ。じゃあオレは帰るな」



「あっ…!!」



「ん?」





何かに違和感を覚えて立ち止まると、オレの袖を半兵衛が掴んでいた。








「…折角だから、お茶でも飲んでいってくれませんか?お礼も兼ねて…」







そう言った半兵衛の表情は、なんとも言えない位新鮮だった。







だって、いつも冷静なのに




真っ赤な顔してすっげえきょどってたんだぜ?











「じゃあお邪魔しよっかな」









掴んだ手を、振り払うことなんてしない。








































「…美味しい」
「おお、良かった!半兵衛がそう言ってくれるなら安心だ」

「甘さも控えめだし、僕は好きだよ。この
ブラウニー







これは二人だけの秘密。











鳥伎さんのみお持ち帰りOK。
学バサになっちゃいました…。本編ではまだ半兵衛と接点が無いので…。
設定は連載主人公と同じです。

主人公は学校の国語教師。