「よお、久方ぶりじゃのぅ?信長公よ」
「フン…まだしぶとく生きておったか…。とっくに野たれ死んだと思っておったぞ」
「相変らず憎まれ口しか叩けん奴じゃの。まあええわ、そんなら始めよか?」
「返り討ちにしてくれる…」
睨み合う二人の武将。
一人は第六天魔王と恐れられている織田 信長。
それに怯むことなく構えているは中国の毛利を破り、今や“中国の死神”と呼ばれている 。
狙うは宿敵の首
「これでどうじゃ!!?」
「…っぬう…」
「ほらほら形勢ひっくり返してみぃ?出来んじゃろ?」
「…小癪な…」
激しい攻防、譲らぬ両者。
しかしその戦いにもとうとう終止符が………
「王手、じゃ」
パチリと将棋版に打ち付ける。
信長は返す手も無く、敗北を認めた。
「これで56勝56敗じゃね、なんじゃまだ五分五分きゃ」
「フン…」
コロコロと表情の変わると、さっきからまったくと言っていいほど無表情の信長。
何故、この二人が仲良く将棋をしているかと言うと…
「あー!様だ!いらっしゃい!!」
「おお、蘭丸。久しぶりじゃな」
「うん!!もっと沢山来てくれれば良いのにぃ!!っていうか様って信長様とどんな知り合いなの?」
「そうじゃなぁ…なんじゃろ?」
「…昔の腐れ縁よ」
そう、この二人は幼少の頃からの幼馴染である。
昔から何事も競い合って、お互いが認めた唯一の宿敵である。
例えて言うなら武田と上杉のような関係だ。
ただ、が中国へ移り住んでからあまり会う事も無かったのだがある日戦場にて再会を果たしたのだ。
そして度々が安土城を訪れ、こうして将棋をしたりしている。
酒を酌み交わしながら語り合う二人。
「“魔王”…ね。ご大層な呼び名付けられとるのぅ?」
「そちこそ“死神”とは名前ばかりではないのか?」
「そんなら…やりあってみるか?」
「望む所よ…」
二人の間に殺伐とした空気が流れる。
蘭丸はこの緊張感に耐えられなくなり、濃姫の所へ行く。
「濃姫様…止めなくても?」
「良いのよ、蘭丸くん。上総介様のあのような楽しそうな顔…様が来た時だけだもの」
信長の表情はいつもの邪悪な笑みを浮かべているだけなのだが、濃姫から見るとあれは嬉しい顔らしい。
ちなみに信長の表情を見分けられるのは濃姫とくらいだ。
「じゃあ今度は碁で勝負じゃ」
「勝たせてもらうぞ…」
碁かよ!!
先程までの冷え切った空気は何処かへ行ってしまった。
響き渡るは二人の話し声と、碁石を打つ音のみ。
「…そういやあ、秀吉が最近デカイ顔しとる聞いたが…?」
「……猿如きの知恵など所詮猿知恵よ。今に我が地に落としてくれる」
「(駄洒落か…?)そうか、ほんなら天下取りはワシと信長のどっちかで決まりじゃな」
「我に決まっておる。…お前と言えど我は容赦せぬ」
「容赦してくれとは言うちょらん。…出来るものならしてみぃ」
目線は碁盤に向いているが、互いに目の前の男を警戒している。
よく知り尽くした奴だからこそ
自分のこともよく知っているのだ。
「伊達も武田も上杉もこの織田が喰ろうてくれる」
「言うのぅ。じゃあ島津や長曾我部、伴天連(ザビー)はワシが狩ろうか。その後ゆっくりワシらの決着といこうで」
互いに目を見合わせ、そして笑った。
「フフ…フハハハハハ…!!我の勝ちだ」
「うお…いつの間に!強うなったな…」
見れば碁盤はほとんど黒石で埋められていた。
生涯でたった一人認めた男。
宿敵と言う名の友。
であるからこそ、この男にだけは負けられない。
魔王 対 死神
この二人の戦いは後に歴史に深く爪跡を残す。
音遠さまへ
…むう、意味の解らん駄文になってしまった。