柄にも無く風邪をひいた。










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「…あうう…」

「まったく肝が冷えたよ…。訪ねたら倒れてるとかやめてよ」




佐助は溜息を吐きながら洗面器の中で手ぬぐいを水に濡らす。
その手ぬぐいを丁寧に固く絞り、寝込んでいるの額に置いてやる。

その冷たさがとても心地いいのでは表情を和らげた。





「悪いなー…折角プリント持ってきてくれたのに…看病とかさせて」
「いいよ、放っておけないし(二人きりだしね)」




何か佐助の言葉に含みがあったが、熱で朦朧としている頭ではそんなことは気にならなかった。






朝から少々ダルイとは思っていたが、まさか風邪をひいてるとは思わなかった。
取り敢えず学校には行ったものの、集中力も無いしフラフラと足取りもおぼつかないので早退したのだ。







佐助は同じクラスで面倒見が良い性格らしく入学してからよくよく世話を焼いてくれていた。
佐助関連か友人も増えたと思う。




隣のクラスの伊達とか、一個下の真田とか、三年の長曾我部先輩や毛利先輩など。
時々、竹中先輩も話しかけてくれるし一年に転校してきた前田って奴にも懐かれた。









ふと佐助を見ると、お見舞いだと持ってきてくれた林檎が立派な兎になっていた。



「うお…佐助、林檎剥くの上手いな」
「これくらい出来るよ。も出来るでしょ?一人暮らしなんだから」
「駄目駄目、オレそういう細かい仕事は」




何か胃に入れなきゃ薬も飲めないとのことで、林檎を口にいれる。
最初は食欲が無かったけど結構食えるもんだな。






「じゃあ俺様帰るけど、薬はしっかり飲んでゆっくり休んでよ」
「おー解ってるって。お母さんか、お前は。サンキュ」
「(お母さんって…)いーえ、どういたしまして」





玄関を出るまでずっと、「暖かくして寝てよ」とか「何かあったら電話して」とか


そんな言葉をかけながら佐助は帰った。(やっぱお母さんだ)





薬も飲み、うとうとしてきたのでオレは眠りに落ちる。
















「…ん…」



熱い…。


熱…上がったかな…手ぬぐいが温い…。








「…まだ…高いな…」




ふと、自分以外の声がしたので目を開けるとそこには伊達のアップがあった。






「何…してんの?」
「起きたか?体温計が見つからなかったからな」


オレの額に自分の額を当てて熱を測っていたらしい。




「薬は飲んだみたいだな。食欲はどうだ?」
「…うーん…少しある」
「Ok、じゃあ待ってろよ」



一度オレの頭をクシャリと撫でてから伊達は部屋を出て行った。






それから二十分くらいしただろうか、奴は手に小鍋を持って戻ってきた。



「ほら、粥だ。食えるだけで良いから食え」
「…わあ、美味そう」
「食わせてやろうか?」
「…なんでそんなニヤニヤしてんだよ。ま、いっか…頼む」
「!?…お前本当に大丈夫か?」



失礼だな、自分で言い出したくせに。
でも確かに変かも。


いつものオレならこんなこと言わないのに。



「熱が出て、人恋しくなったんじゃねえの?」
「……」



なんだか嬉しそうな伊達が少しムカついたので無言で睨み返してやる。








伊達の粥は凄く美味くて、食欲が無かったオレでも全部食べれた。
それを見届け、伊達は帰っていった。



「いい子にしてろよ、なんかあったら夜中でも良いから電話しろ」
「粥まで作ってもらったのに…いいよ」
「いーからCallしろ。You see?」
「…わかった」





なんだか子供扱いされてるようだが、反論するのもアレなので大人しく従っておいた。


「じゃあな」

「!!」

「礼代わりに貰っとくぜ」







あいつ…帰り間際にでこチューしていきやがった………!!!
















また、一人になったので少し退屈だった。
この家って…こんなに静かだったんだな…。





ふと、急激に心細くなった。





先程まで、何も感じなかったのに。









「…っ…」


目を閉じても眠れない。
逆に、何か不安のようなものが渦巻いて寝る事なんて出来やしない。
















「大丈夫でござるか?」


「…っ…え?真田?」







目を開けると、其処には後輩の顔。
何故コイツまで此処にいるんだろうか?







「実は佐助から殿が早退したと聞き…お見舞いに参ったでござる。部活が終わってからなので遅くに申し訳ない」
「いや…全然大丈夫だけどよ…」

そしていきなり部屋のドアが開けられ、そこにはもう一人の後輩の姿。


「おい、幸ー。先輩どうだ?」
「え?前田もいるの?」
「よっ!先輩風邪だって?まつ姉ちゃんからお見舞い持って行けって言われてさ」



色々考慮してくれたのだろう、前田が手に持つ袋には数々の食べ物が。
そっか…オレ利家先生の体育の時早退したんだった…それでまつ先生が…。





「後、これ半兵衛から。見舞いには行けないからって」
「それから元親殿と元就殿からでござる。お二人共来るはずだったのでござるが…」





どうやら長曾我部先輩は補修、毛利先輩は急な生徒会会議が入ったらしい。
竹中先輩はあまり大勢で行くと迷惑になると遠慮してくれたらしい。





「…なんで、皆…」
「皆殿に早く元気になってほしいでござるからな」
「そうそう、先輩いねーとつまんねえもん」




そう言って二人はオレのベッドの傍に座ると、オレの右手を二人で握った。


「病気の時にはこうしたらよく眠れるってまつ姉ちゃんが言ってた」
「某も風邪をひいた時はよく佐助に握って貰っていたでござる」




その温もりが凄く安心できて。



オレはあっという間に睡魔に襲われた。




「二人共…ありがと…」

「なんの。ごゆるりと休まれよ」
「オヤスミ、先輩」














なんか、病気になるもの悪くないなあ。


















ヒカリ様のみお持ち帰りOK
駄文でごめんなさい…