俺が小学校二年になったころ、父さんが再婚した。

元々うちはお母さんが小さい頃死んじゃったから父さんも俺には母親が必要だろうと思ってのことらしい。






新しいお母さんは綺麗な人だった。
とても優しくて、俺もすぐ打ち解けれたよ。







でも、新しい母さんもやっぱり体が弱くって弟を産んでから入院の日々が繰り返しだった。
父さんも仕事が忙しいし、母さんの見舞いにと走り回っていたから俺は分家の小十郎さんの所に預けられた。





結局俺は弟には一度も会った事が無い。
















そしてある日、父さんは良い医者がいるということで母さんを連れて外国へ行くって言った。

俺は自分から“行かない”と言った。
日本には友達もいるし、何より、あの家族の中ではどうしても自分が異物に思えて仕方なかった。



それなら、と小十郎さんの所でこのまま暮らす事になり父さんと母さんとまだ顔も知らない弟は外国へ行った。


















そして、四年の月日が流れて俺は小学校六年生になった。

身長も結構伸びたし、周りからはしっかりしてるとよく言われる。










いつの間にか、父さんや母さんがいない生活が当たり前になった時転機は訪れた。


















「…え?」






夜中に鳴った電話は小十郎さんの表情を凍らせ、俺の意識を何処か彼方へ飛ばした。


















父さんと母さんが、死んだ。












外国なんかでよくある、出来事だった。

道で母さんにぶつかった男に父さんが注意したら、相手がいきなりナイフを出してきたらしい。
父さんは母さんを守るようにして刺された。
母さんはそれがショックで心臓の疾患が起こったらしい。
























何も、浮かんでこなかったよ。






悲しい、とか憎い、とか。





無、ってこういうものだったんだ。











海を越えて父さんと母さんの骨は帰ってきた。
いきなり開かれた葬式には見覚えのある顔もあったり、まったく知らない顔もあった。



その中で、俺は一人何故か見覚えのある見知らぬ子どもを見つけた。






右目には眼帯を当て、俯き何も言わず座っている。
明るい茶色の髪色と生意気そうな目は誰かを思わせた。












「あれは…」
様、あの子が…貴方の弟君です」





そうか、父さんに似てるんだ。











そして俺は弟と初めて対面した。