「まあ、皆様おかえりなさいませ!どうでした?見つかりましたか?」
期待を込めた笑顔で迎え出た藤姫。
それを見て神子と八葉は心苦しくなった。
「ごめん藤姫…それらしい人いなかったよ〜」
「俺もだ。結構遠出はしたんだけどよ」
「私も力の限り捜したのですが…」
「内裏にもそのような人物はいなかったよ」
「ええ、くまなく捜してみましたが該当する人物は見当たりませんでした」
「私も…。お力になれず申し訳ありません」
期待した眼差しで見つめる藤姫に申し訳なく答える白龍の神子、白虎組、天の朱雀・青龍・玄武。
「そうですか…。ああ一体何処にいらっしゃるのでしょうか…“黒の申子”様…」
がっかりと肩を落す藤姫。
だが、地の青龍・朱雀・玄武の三人は違う答えをした。
「僕は見つけました!絶対あの人です!…途中ではぐれちゃったんですけど…」
「私もだ。しかしここへ来る途中で別れた」
「俺も見たような気がするぜ。一瞬だったけどよ」
「まあ!詩紋殿に泰明殿、天真殿は黒の申子様を見つけたのですか?」
その答えに藤姫の顔が綻ぶ。
「連れてこれなければ意味が無いよ?三人とも」
「ごめんなさい…」
友雅の的確な返答に詩紋は明らかに落ち込んでいた。
あの時、とはぐれなければ
それが頭をよぎって仕方が無い。
「謝るな詩紋。見つけてもねえコイツが言うことじゃねえ」
「おや、これは手厳しいな」
天真に励まされるが、それでも自分はあの人と離れてしまった事を悔いる。
会ったばかりだというのに、どうしてこんなに心惹かれるのだろうか。
あの人と居ることを自分は望んでいた。
「兎に角、黒の申子様がもし鬼の手にでも渡ってしまったら大変ですわ」
「ねえ藤姫、私まだその”黒の申子”って何かよくわからないんだけど」
「俺も俺も。そいつなんかあんのか?」
そもそも何故見つけて連れて来なければいけないのかもわからない。
「あのお方は…神子様を助けてくれる方なのです。昔の伝承に基づくなら…守人様。泰明殿はご存知でしょう?」
泰明は小さく頷く。
「その昔――神子と八葉、それから守人がいた」
泰明が藤姫に続いて説明する。
「守人、とは名の通り守る者。神子を助け、八葉を守る者だ」
「八葉を守る…?我らがお守りするのではなく?」
「守人はその身に五行全てを操る力を持つ。そして八葉に力を与えることが出来る。
神子のように怨霊を封ずる力は持ちえていないが、その身に宿る力は強大だ。なんとしても鬼に渡してはならない」
そもそもの発端は昨晩の占いだった。
益々酷く荒れていく京。
そこへ現れたのが神子のあかね。
だが、あかねの力以上に穢れは広まり京の加護は失われていく。
あかねを助ける為、藤姫は占いで今後のことを占ってみた。
すると、黒衣を纏った青年が映ったのだ。
彼からは禍々しい邪気を感じない、どころかとても清らかな神気を感じる。
もしや、伝承にあった“守人”ではないだろうか。
そうなら、彼は神子を助けてくれるはず。
だって守人は神子を守る存在なのだから。
そして現在の状況に至る。
「まだ守人様かどうかもわかりません。ですから、“黒の申子”様とお呼びしております」
あの方が守人様ではなくとも、その身にまとう神気は本物。
どちらにせよ、早く見つけなければ。
「よし!私もう一度捜して見るね!」
「神子殿!私も同行いたします」
「俺も!絶対見つけてくるからよ」
「それでは私は昔の伝承などについて調べなおしましょう」
「私は寺院にあたってみます」
「やれやれ…そんなに張り切ると見つける前に疲れてしまうよ」
「俺達はもう一度さっき見た場所に行ってみようぜ」
「そうですね!もしかしたら戻ってるかも」
藤姫の話を聞き、意気揚々と言い出した八人。
しかし、泰明だけだ何も言わなかった。
「どうかいたしましたか?泰明殿」
藤姫が尋ねる。
「そやつは後で土御門に来ると言っていたのだが…」
「「「「「!!!?」」」」」
彼らは知らない。
神子が二人いることを。
白龍の神子の対、黒龍の神子を。
ああ、周りをよく見なきゃ
何気に漫画寄りのシナリオかも
まだ蘭の存在を知らない神子と八葉。