なんかいきなり引っ張って連れてこられたけど…いつの間にかはぐれてもうたなあ…。






「おーい、詩紋ー?連れて来といて一人にせんでやー」









呼べど返事無し…。泣くでほんま。




















「何者だ?」


「んあ?」

























目の前で独り言(しかも変わった言葉を使う)を言いながら歩いている男を見つけた。


普段なら気に留める事でもないが…宝珠が何故か反応した。






この男、我ら八葉もしくは神子と何か関係あるのだろうか。
















「お前は何者だ?」

「いきなり何やねん?名を名乗る時はまず自分からやろ?」

「そうか、私は安倍 泰明だ。お前は何者だ?」

「あんさんそれしか言えへんのか…?まあええわ、オレは 








見たところ普通の人間にしか見えぬ…が、微かに奴を取り巻く“神気”が見える。



もしや、神子と同じ…?


いや、まさかそんなはずがあるわけなどない。

だがこの者から感じられる気は何か特別な…。













「あら、黙ってもうた。なんやねん一体……ん?あんさんのその顔にあるの、何や?」

「お前にこれが見えるのか?」





宝珠は八葉と神子にしか見えぬ筈…!!



間違いない!







「着いて来い」


「ほえ?どわ!何や?!」












もしかしたら、あの文献に載っていた…………


































「あれ…?どうしよう…はぐれちゃった…」




無我夢中で走っていたらいつの間にか詩紋は一人になっていた。

オロオロと周りを見渡していると向こうから見知った顔がやってくる。





「おーい詩紋、どうしたんだ?」

「詩紋くん?」


「あ、天真先輩にあかねちゃん!!ねえねえ大阪弁で話す人、見なかった?」












「はあ?大阪弁?居る訳ないだろ、ここは京だぞ?」



夢でも見たのか?と明らかに信じていないと言う天真。
しかし詩紋の表情は真剣だった。






「居たんだよ!!真っ黒な着物着てて、背がえっとー…天真先輩より少し低めでとっても優しい人だった」




詩紋の様子からその人物が危険な奴ではないことは分かる。



「ってことは私達と同じようにこっちに来た人なのかな…!真っ黒な着物かあ…そんな人見たら絶対気がつくよねー…ねえ、天真くん?」







ふと、何かが頭によぎる。


「真っ黒な着物…?あれ、俺どっかで見たような…」






天真の脳裏に一瞬浮かんだのはあの時すれ違った人。



































一体なんなんやろこのお人は…

急に付いてこいとかほんまわけわからんわぁー。

しかも会話の一つもあれへん…。オレこういう静かな雰囲気苦手ー…










「安倍はん、何処連れてく気や?」

「土御門だ」

「つちみかど?何処やねんって一体……あ!」

「どうした?」

「アカンって。オレ連れがおるんや!勝手にどっか行くわけにいかへん!」






すっかり詩紋のこと忘れてたわ!







「ならばそやつも連れて来い」

「何処行ったかわからへん。見つけたらその土御門ってとこ行くさかい、先行っててやー」





でも正直、詩紋が見つかったとしてもついてってもええんやろか?


特別危ない人に見えるわけやあらへんけど、安全そうにも見えんしなあ…。




でも今のオレには行くアテも無ければこれから先の保障も無いんや。





























さあ、鍵は渡したぞ?開けるかどうかはキミ次第