今日は物忌みだし、さんと話してみようっと。
さんすっごく優しい人そうだし、
八葉に負けないくらい格好良い(ここ重要)もんね!!(笑)





「でやああ!!」
「甘いでぇ!」





あれ?天真くんの声の後にさんの声…ってことはあっちの武士団の方から?

















「…っだああ!!また負けたぁぁぁ!」
「これで三戦ともオレの勝ちやなぁ。天真、約束やで」
「…わかったよ」




「天真くん、さん!」
「おはよ、あかねちゃん」
「よう、あかね。どうしたんだ?こっちまで来るなんて」
「声が聞こえたから…何やってたの?」




天真くんは肩で息するほど疲れてるけど、さんはまだまだ余そう。
二人共木刀持ってるってことは朝稽古してたのかな。















…………あれ?
















なんか遠くにいるあれって…
頼久さん???
すっごいこっちをチラチラ見てる…しかも羨ましそうな目で。














「ねえ、天真くん。もしかして起きてからずっとさんと稽古してる?」
「ああ、そうだけど…あれ?頼久の奴まだあそこにいたのか」
「オレ等もう一時間くらいはしとったなあ」







……じゃあ頼久さん一時間もあそこで見てるってこと?

もしかして…頼久さんもさんと稽古したいのかな??













「ちょっと声かけてみよか、おーい頼久ー」








呼ばれたことに吃驚してるけど、待ってましたと言わんばかりに早足になってるよ頼久さん。









「お・おはようございます神子殿。あ、あの…殿…」
「ん?」

「わ・私とも…手合わせ願いたいのですが…」












言った―――――――――!!













「ええよ。その代わりオレに負けたらなんか奢ってな」
「わ・わかりました。それでは…よろしくお願いします!」








ああ始めちゃった…。頼久さん結構強いのに…。
さん天真くんには勝ってるみたいだけどどれくらい強いのかな…?










「あーあ、頼久の奴絶対奢らされるぞ」

「そんなに強いの?さん」
「滅茶苦茶。型とか何も無いのに動き読み辛ーし、予想外な攻撃ばっかりしてくるぜ」






でも顔は全然悔しそうじゃないね、天真くん。










「天真くんは何をしてあげるの?」
「俺は京の案内兼奢り。アイツ
“勝負には見返りが必要”って言うからよ」








二人に目を戻すと、いつの間にか頼久さんが劣勢になってる。
さんは軽々と木刀を左手一本で振り回して頼久さんに向かってる。












「そこぉっ!!!」
「…っ!!!」











カラン、と頼久さんの木刀が音を立てて落ちた。


さんの、勝ちだ。














「約束は、約束やで」
「…勉強になりました。ありがとうございます」
「いつでも大歓迎やで〜。そんな簡単に勝たさへんしな」





頼久さんはすごく満足そうな顔をしてもどっていった。


さんは肩をぐるっと回し、わたしの方へ振り向いた。










「あかねちゃん、今日は物忌みとかゆうやつちゃうん?外おってええん?」
「え、なんでそれ…」
「あそこあそこ」








さんが指差す方向には顔を真っ青にした藤姫がいた。

や…やばい、物忌みの日なのに何も言わず外にいたからまた心配かけちゃったんだ!







「神子様〜〜〜!!!!」
「ごめん!!藤姫!!」
「お部屋にいらっしゃらないから…何処に行ったのか…」
「本当にごめん!!!」



たまたま今日は藤姫が来る前に起きちゃったんだよね…。それで心配させちゃったんだ…。










「はいはい、落ち着いてな藤姫ちゃん。可愛い顔が涙でグシャグシャやで」
「守人様…」
「ちゃうちゃう、オレの名前はや。役職でなんて呼ばんといて?」
「はい様…」
「んー様付けもいらんのやけどなー。ぼちぼち慣れよか」










藤姫はいつの間にか笑顔になってた。
すごい…さん。












「じゃあ、あかねちゃんは大人しゅう部屋行こな。退屈やったらお兄さん暇つぶし行ったるから」
「…は、はい!」








まだ…年下の女の子程度にしか見られてなくてもいいや。






いつか、振り向かせてみせるから。
































「へー天真と詩紋もこっちの人やないんやー。全然馴染んでるから気づかへんかったわ」
「それさんにそっくり返しますよ。さん元々こっちの人みたいですもん」
「人間順応能力っちゅーもんがあるんや、オレはそれが人より高いだけやで」





さっきから止まる事の無い会話。

こんなに物忌みの日が楽しいって思ったの初めてかも…。

来たばっかりの時は外に出れなくて退屈だったもん。







「ねえ、さんは…恋人とかいなかったの?いきなりこっちへ来ちゃって心配とかしてないかなあ」
「恋人??そないな心配いらへんよ、おらへんし。あーでも可愛い弟妹達が心配はしとるかも」

さん兄弟いるんですか?」

「むっちゃ可愛えよ。16が二人と17が二人」
「随分年近いんですね」




「ま、血は繋がってないけどな。弟妹分ってとこや」







一瞬さんの笑顔が凄く寂しそうに見えた気がしたけど…それはほんとうに一瞬のことでまたすぐに戻った。








「そろそろ、日暮れるな…。オレはちょっと鷹通と約束あるから行くな」

「あ…今日はありがとうございました!楽しかったです」
「オレもやで、ほなまた明日」






















もしかして…わたしの事も妹さんと同じ様に優しくしてくれてるのかな…。



それで良いと思ったはずなのに…どうして、今ムカっと来たんだろう…。







「…変なの」


































「見えるか、蘭。あれがお前と同じく召喚された娘だ」
「あの子…」





何故あの子の傍にあの人がいるの?



あの人は私のものなのに。




龍神の神子は私一人で十分なのに。










許せない…。




























さあて、白と黒の扉




どちらのドアノブを握る?