「結構良いものがあるんだな、皆使わないなんて勿体ねー」
「兄上に使って頂ければ武器も喜ぶでござる」
兄上は多彩な武器を使う。
今も刀だけじゃなく、佐助がよく使う苦無や小刀や少量の火薬も持っている。
ウム、やはり最強の武人になるには色々な得物を扱えなければいけないのだな!
「でも試しに使ってみねえと相性がわからん。そうだ幸、いっちょやるか?」
「ほんとでござるか!!」
兄上との勝負は実戦と同じくらい、いやそれ以上興奮する。
武器を交えていく内に相手しか見えなくなる。
是非にと言おうとした瞬間、あの男がやってきた。
「ちょっと待ちな。幸村は先に俺とやってもらうぜ」
「ま、政宗殿…!!」
昨日の話…本気だったでござるか…。
!!!そういえば…今ここには兄上が!!
「幸、行っておいで。見ててやるから」
「…は、はい…!!」
おかしい。
あれ程昨日、兄上について詮索してきたのに。
いざ実際に本人を前にしてこうも無反応なのは。
何故だ?
「こうして真剣をかまえるのは織田を倒すまで無いと思ってたんだがなー…それじゃあつまんねえ」
「…っ本気で…参る」
「当然だ。そうしてくれねえと困るぜ」
この男の眼は本当に苦手だ。
自分を見ているようで、何処か別のものを見ている。
常にその先を見据える竜の眼。
「行くぜ!!真田幸村!!」
「参る!!」
幸村と政宗が手合わせ、と言う名の斬り合いを初めて半刻。
最初はくらいしかいなかった鍛練場は大勢の兵士で賑わっていた。
「長…」
正直暇になりだした。
両者とも一歩も引かない攻防なので戦いにヤマ場が無い。
ただずっと刀と槍が交差するだけなのだ。
「そろそろ…昼になっちまうんじゃねえか?腹減ったなあー…」
そういえば朝から何も食べていない。
朝起きて武器を取りに行ってそのままこうなったので朝餉なんてとうに終わってしまった。
「二人共腹減らねえのか?」
今だ終わる事の無い激しい攻防。
しかもあまりに激しくやり合っている為、周りへの被害が尋常じゃない。
「しょうがねえ。無理矢理止めるか」
溜息を付き、手に入れたばかりの刀を抜いた。
「っく…流石は奥州筆頭…」
「中々やるな…真田幸村…」
何度目かになる競り合い。
その最中、政宗が口を開いた。
「てめえ、アイツとはどういう関係だ?」
「アイツ?あの方でござるか?…某にとって兄上は…もう一人の兄のような存在!信幸兄上の代わりによく某を稽古してくれたのも兄上でござる」
「……てめえには本物の兄がいるんだろうが。なのに何故お前がアイツのことを兄と呼ぶ!!?」
幸村の返答に政宗は思い切り力を込めた刀をぶつけた。
あまりの勢いに幸村は弾き返される。
「ぐっ!!」
「なんでてめえなんだ…、どうしてアイツの隣で笑ってるのがてめえなんだ!!…あの場所は俺のモンだったのに!!」
「ま…政宗殿…?」
弾かれ、体勢を崩した幸村に政宗の六爪が襲い掛かる。
幸村は咄嗟に目を閉じた。
「終了。もうそこまでだ」
右手には刀一本、左手には小刀一つ。
だが、それだけで
は政宗の六爪をすべて受け止めていた。
「熱くなりすぎだ。それから幸、命のやり取りをしてる最中に目を閉じるなとあれ程言っただろう」
「…!申し訳ございませぬ!!」
「伊達殿も、途中から冷静さが無くなっていたぞ。同盟を組んだ翌日に危ないことはやめてくれ」
「……Sorry.悪かったな」
あれだけ暴れていた政宗や、熱の入りすぎた幸村がの一言であっさり止まったことに周りの兵士達は感嘆の音をを漏らす。
しかし何故、二人が素直に引いたかと言うと
の瞳が物凄く冷たかったからだ。
怒っているというより、呆れている。
「さて…二人共…」
「「!!」」
二人は肩を震わせた。
「腹、減らないか?」
「「へ?!」」
怒られると思って身構えていたのに、来たのは全く予想外の言葉で間抜けな声が出てしまった。
「よし、昼飯だ。さあ行くぞ二人共」
は城下へと来ていた。
勿論幸村、政宗も一緒に。
そして入った先は飯屋。
「すいません、きつねうどんと握り飯を三人前ね」
「あいよ――!」
「あ、あのう…兄上…?」
「なんだ?きつねは嫌いか?じゃあ天ぷらそばにでもするか?」
「い、いえ…」
「伊達殿は?変えるか?」
「……変えろ」
「わかった。じゃあ何にすんだよ「名前」……は?」
「伊達殿なんて敬称つけて呼ぶんじゃねえ。名前で呼べ」
「………おう、政宗」
伊達がどんどん子供になってく…