「嘘!?師匠元に戻ったの!?」


「残念ながら…戻ったのは、一個だけなんだ…。今分かるのはオレは幸の兄代わりだったことだけ」

「俺様のことは…?」
「真田十勇士長の猿飛佐助だろ?」


「…そうだけど…それだけ…?」
「……」









一つ目の欠片が戻った事を信玄や佐助に伝えた。
信玄は凄く嬉しそうにしてくれて、幸村と恒例のアレをやっていた。




「でかしたぞ!!幸村ぁ!!」
「やりましたぞ!!お館様ぁぁ!!」
「ゆきむらぁ!!」
「お館様ぁぁぁ!!」
「ゆきむぅらぁ!!!!!」
「おやかたすぁまぁあ!!!!」







でも、取り戻したのは一つだけだから
まだ佐助のことは幸村の部下、という認識しかない。


悲しそうな顔をする佐助を見て、胸が痛んだ。













幸村とひとしきり殴りあった後、信玄が明日の予定について話してきた。

「明日は会談の席になるからのう…。少しには退屈かもしれぬな…」
「いいよ。部屋でぼおっとしてる」





何があるのかと言うと、奥州から伊達政宗が訪ねて来ると言う。
は信玄からそのことを聞くと、自分にはあまり無関係だろうと思い、部屋に篭ることにした。























奥州筆頭伊達政宗は只今、同盟のことについて武田に赴いていた。
しかし、本来同盟などを組まずとも伊達は天下を取るつもりだった。

それというのも、天下取りには最大の敵がいるからだ。








織田信長







織田信長を倒さない事には天下は取りえない。
織田は確実に勢力を伸ばしている。

悔しいが力は確実に一番上なのだ。



だからまずは、織田を倒す為に武田と同盟を組もうと決めた。


その後で武田と伊達、両軍の決着を着けるのだ。












「ではここに武田・伊達の同盟を成立する」

「OK,だがあくまでもこれは織田軍討伐までだ。You See?」

「無論、それは承知しておる」







会談は何事も無く無事終了した。






幸村は早くにこのことを伝えたいのか、ソワソワとしていた。

そこに目をつけた政宗はニヤリと笑った。





「Hey,真田幸村。この後暇なら手合わせに付き合えよ。腕が鈍ってないか見てやるぜ」


「なっ!!政宗様!!今日は会合の為に赴いたのですよ!!」
「Shit!いいじゃねえか、少しくらい。それとも何か?何か出来ないReason(理由)でもあるのか?」




「…っ!」




幸村はどうしようか迷っていた。

正直ここまで言われて大人しくしているのも武人として情けない。
しかし部屋でジッとしているが出てきてしまうかもしれない、そして政宗と出会ってしまうかもしれない。









確か、兄上は奥州にも行ったことがあると仰っていた…。



そうすれば政宗殿と知り合っている可能性もあるのでは…。







今だ完全に戻っていない兄上と政宗殿が出会ってしまったら確実に大騒ぎになる。







「まあやらなくてもいいぜ。信玄公よ、少し厠を借りれるか?」

「ああ、今案内させよう。おい幸村」
「はっ!」



















「お前今日はどうしたんだ?落ち着きが足りねえぞ」


「…なんでもない。厠はこの先をまっすぐでござる。それでは」






幸村は元居た部屋へ戻ろうとした。











その足を止めた人物がいた。――政宗だ。





「なあ、お前…って奴を知ってるか?」


「!!」







政宗に背を向けていたとはいえ、思いっきり動揺をしてしまった。

政宗もただならぬ幸村の様子に何か知っていると確信した。











「その様子じゃあ知ってるみたいだな。ここ最近急に俺は奴の事を思い出した。お前もそうじゃねえのか?」

「…ああ、某も最近思い出したが…」






ここまではっきり動揺したのだから隠すことは意味は無い。
なのではっきり告げる幸村。





しかし、政宗の眼はそれでは納得出来ないと言っていた。





「…てめえが嫌に落ち着いてるってことは、何か知ってやがんな。知らないなら取り乱すはずだ」






この男は、こういう時嫌に鋭い。

この眼に睨まれたら全てばれてしまいそうだ。














運命は皮肉にも、幸村の味方はしてくれなかった。








ここは廊下のど真ん中。
そして厠へ向かう途中の廊下には、アイツの部屋があった。












「あ、幸。もう話し合い終わったのか?」




丁度、厠へ行った帰りだったが政宗の後ろから歩いてきたのだ。



「!!!?ま、まだでござる!!今は客人を厠へ連れて行く途中なので失礼致す!!」



幸村は電光石火の早業で政宗が振り向く前にの前に立ちふさがった。
身長は少々幸村の方が高い為、政宗からはが見えない。





「おい、真田…。何やって「さあ!!早く行くでござる!!お館様をお待たせしてはならん!」




幸村は手早くを近くの部屋に押し込め、政宗の足を急がせた。

急に行動が怪しくなった幸村の様子に気がつかない政宗ではない。







「あ、団子」
「!まことか!?」





あさっての方を指差し、幸村の注意を逸らすと先ほど幸村が開けた部屋の障子を開ける。








「!!!」




やばい


幸村は絶句した。


















「よっ。竜の旦那−!」

「…猿飛だけか…?」

障子の先にはにっこり笑顔の佐助がいた。

「何やってんの?さっさと戻らないと片倉さん待ちくたびれちゃうよー」

「今ここに誰か入らなかったか?」

「いないよ、ホラ見ての通り」







佐助は部屋の中を見せる、が確かに佐助以外誰も見当たらない。






「…??」


それ以上捜すのも面倒なので政宗は厠へ向かった。














幸村と佐助は政宗がいなくなるのを確認して安堵の息を吐いた。

「助かったでござる…佐助」
「大体上から見てたしね。旦那の判断は正しいと思うよ」




佐助はチラリと部屋の片隅を見た。



そこには佐助の忍術によって眠らされたの姿が。
先程政宗に見つからないように術で姿を消したのだ。












二人はそっと襖を閉じ、部屋を後にした。