久々に城下の様子をと外に出てみた。

中国も中々活気があっていいな、奥州や甲斐も結構なものだけど。




「おばちゃん、団子ちょうだい」
「あいよ!おや見ない顔だねえ。しかも色男じゃないか!」
「ははっあんがと」



通りに面した席に座り、出された茶で喉を潤す。
団子も中々美味い、今度幸も連れて来てやろう。


















そういえば出かける前も苦労したなあー…














兄上!某と手合わせしてくだされ!』
『んー…それ夕方でもいいかあ?ちょっと今から外に行くからさあ』


あの時、刀の手入れをしながらだったからつい口が滑っちまったんだよな…。



『某も行くでござる!!』
『え?…あ、幸かよ!!うわーまずった…』
『今お一人で外へ出てはいけませぬ!お館様からもご命令を受けておりまする!』





幸の声聞いて、佐助やら政やらとどんどん集まって……





『兄上が行くなら俺も行くぜ!!』
『俺のが邪魔にならないよね?師匠に付いていけるの俺だけだし』
『俺もここら辺見て回りてえと思ってたんだ!一緒に行っていいだろ?!』
『貴様らのような騒がしい輩と一緒にいてはが疲れるだけであろう。我が行く』




皆が付いてくって聞かないんだもんなあ…。
結局置いてきちゃったけど。





「いやあ帰るの怖いわあ」

























行き交う人々の群れの中、何処かで見かけた姿を見つけた。


「えー…っと……そうだ!!この前甲斐で会った……ま、ま…前田!!」
「ん?あー!!じゃん!!!」



しまった、声に出しちまった。
前田はオレの声を見事に雑踏の中聞き分け、こっちへ向かってきた。



「珍しい所で会うなあ。この前は甲斐で今度は中国かよ」
「そういうも相変らず放浪してんなあ。隣いいかい?」


断る理由も無いので、少し寄ってやると前田はどかっと座り込む。


「いやあ当ても無く歩いてたんだけど、西海の鬼が毛利と同盟組んだって聞いてさー。見に来た」
「当ても無くって…此処まで来れることがすげえな」


「良いじゃん、おかげでにも会えたんだし………!!?

「どうし…!!



何処からか感じる殺気。
間違いない、これはオレに向けられている。





!走れ!!」
「っ!!」




前田に逆らう事も無く、オレは走り出した。
それはこの混み合う雑踏の中でも一直線にオレを見ていた視線から逃げる為。


隠す気が無いのか、ありありと判る殺気。




一瞬後ろを振り返ると、白髪の男がこちらを見ていた。









ア イ ツ ハ ナ ニ カ シ ッ テ イ ル






頭の中で警鐘が鳴っていた。



























走って、走って人気の無い森へ辿り着いた。
だけど背後から付いてくる気配。



誰だ!?アイツは誰なんだ!!

なんでオレの心がこうも乱される?!






オレ一人ならまだしも、今は前田がいる。
最早逃げ切るのは難しいと、走るのをやめる。




「こりゃあ逃がしてくれる気は無さそうだぜ」
「…大丈夫か、



前田の問いにコクリと頷き、刀を抜く。
辺りの雰囲気が段々と変わってゆく。

先程まで鳥が鳴いていたのに、今は虫の音ひとつ聞こえない。



空気が冷たくなる。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「伏せろ!!!」
「え?うわああ!!」



声はかけたが、それでは遅すぎると思い前田に足払いをかける。
すると先程まで俺達の胴体のあった場所を鎌が横切った。





「フフフ…とても良い反応ですよ。やっと会えましたねえ……」






――明智 光秀――は嬉しそうに笑った。









「光秀…てめえなにしやがる!!」
「私が用があるのは貴方の隣の方ですよ、慶次」




オレに向けられる鎌。

明智の瞳はオレを殺したいと言っている。






刀を右手で握りつつ、左手で爆薬を掴んでいた。
オレの頭の中はどう逃げるかだけを考えていた。




 
コ イ ツ ハ ヤ バ ス ギ ル 、 イ マ デ ア ッ テ ハ イ ケ ナ イ






そんな声が脳内に響いていたからだ。









「とても…とても…貴方に会いたかった…。それはこの手に貴方の骸を抱く為…」


――狂っている。
欲しいものを殺す。


それがアイツの愛情表現。








前田はオレと明智の間に立つと、オレを明智から庇うようにした。

「光秀よ…。此処にいるのは魔王さんの差し金か?」
「信長公は関係ありません。むしろあの方に邪魔されては困るんですよ。私がその方を頂くんですから」



言うやいなや、明智の鎌は前田に向かっていった。
予測していたと言わんばかりに前田は自分の大刀で薙ぎ払う。


!コイツは俺が引き受ける!!お前は逃げろ!」
「馬鹿か!コレはオレが売られた喧嘩だろうが!!」




逃げることは考えていたが、お前を置いて一人で逃げるなんて思っちゃいねえぞ!!!



「邪魔ですよ、慶次」


明智の鎌二本が前田の大刀を押し切った。
体勢を崩した前田に明智の鎌が襲い掛かる。



「…っ!!!!」




















「ああ……その目だ。ようやく出て来てくれましたね…“蒼き陽炎”」


間一髪、前田の前に飛び込み明智の鎌二本ともを弾いた。



「…生憎今オレは記憶がぶっ飛んでんだよ。……狙われる道理とやらを教えてもらえるか?」





そんな反応は予測してなかった、とばかりに明智の目は大きく見開いた。
勿論オレの後ろで座り込んでいる前田もだ。





さあ厄介なことになったぞ。


…ついて来て貰えばよかったかなあ。(冷静な佐助か元就に)