忍としての記憶が甦ってから、習慣が抜けない。










例えば、寝る時けして無防備な姿を見せないとか

足音を消して歩くとか







まあなるべく意識して普通に振舞うようにはしてるんだけどな。
オレ自身、見も心も忍になるつもりはないし。




忍びは…全て押し殺して生きなければいけない。


心全部























朝起きて、早速長曾我部がやってきた。











「早いな、もう起きてたのかよ」



「おはよ。少しまあ癖みたいなもんだしな。それよりきょ
ド……



物凄い足音が響いて、その後オレの部屋に毛利が飛び込んできた。














「……っハア…」




「なんだ?元就、そんなに息切らして」

「…頭ボサボサだし、寝巻きのままだぞ…?」








着物を乱し、息を切らし元就は走ってきた。


そりゃあ長曾我部も寝巻き代わりの軽い着流しではあるが、まさかあの几帳面そうな毛利が寝間着のまま走って来るなんて。












「……おるな…。ならば…よい」











と、一言だけ呟くとまたすぐに引き返して行った。







「アイツ、俺の存在に気づいてたか??」
「いや、思いっきり無視だったな」














目は真っ直ぐに向かっていたから。












昨日が帰ってきたのが夢だったら





朝起きていなかったら








そんなことを考えてしまい、柄にも無くみっともない姿で走ってしまった。












『情けない…』











自分にそんな熱情があったなんて思わなかった。



























「はあ?戦?始まるのか?何処と?」








「伊達軍」











思わず茶を飲んでいた手が止まる。












「え…???それどっちからふっかけてきたんだ?」

「元々折り合いは悪かったんだよ。でもまあきっかけは……」





チラッと元親はの方を見た。









「え?オレ?」

「いやあ…なんというか。どうやら俺達がお前と仲が良いのが気にくわねえらしいぞ」























絶句












ああ 







オレの弟は








いつからそんなに独占欲が強くなったのでしょうか…?













「達ではない。伊達はお前に挑んできたのであろう。我を勝手に中に入れるな」

「同盟組んでんだから一緒だろうが!なんだその冷たさ!」







「戦か〜〜…。仕方無え。オレも手伝うわ」









「「は??」」








「天下取りならまだしも、己の私利私欲だとしたら許せねえな。ちょいと灸をすえてやる」





まったく、この間のオレの話全然理解してねえじゃねえか。

小十郎も家臣ならちゃんと政を――…って無理か。これ以上あいつの心労を増やしたら胃炎で死んじまうわ。
この間の様子じゃあかなり苦労してるみたいだったしな。






「…前言撤回。元就、てめえは休んでて良いぜ」

「何を言うか。そなたでは伊達には適うまい」

「んだと!?鬼が龍に負けるかよ!」

「鬼は負ける運命であろう?」












あー…また始まった。

一日一回はいがみ合わなきゃ気がすまねえんだな…。













「それで…伊達軍の進行状況は?どれくらいの兵を連れてるとかさ」




「「武田も来るぞ」」


「は?」



「あいつら同盟組んでんだろ?先に手に入れた情報じゃあ武田と伊達の旗印がこっちに向かってるらしいからな」
「まあ数など我には無意味よ。どのような輩でもこの我が知略で攻め落すのみ」



毛利の自信満々な発言はとうにオレの耳には入ってなかった。





目が点。






馬鹿が増えた……。
あいつらまとめて説教してやる…。