毎晩、夢を見るんだ。
そこではオレは、オレじゃなくて。
でも楽しそうに笑ってる。
夢の中のオレは、オレじゃない。
でも“オレ”なんだろう。
見る夢は日に日に変わるけど、毎日同じ種類の夢。
オレが、知らない誰かと、笑い合って、楽しそうにしていて。
だけど、いつも体がガクンっと沈んで目が覚める。
夢は、そこで終わり。
別に嫌ではなかったんだ。
夢ならそれは仕方無い、と思っていたし。
けれど、現実のオレに変な影響が出始めた。
まず、記憶が曖昧になる。
昨日、何をしていたか思い出せない。
次に、時々意識が飛ぶ。
周りは“今別人のようだった”と口を揃えて言う。
そして…夢の中の記憶が現実世界とフラッシュする。
もうオレには夢と現実の区別がつかない。
結果…オレは眠らなくなった。
変な夢を見なければ良い。それには眠らなければ良い。
そんな日が何日も続く。
流石に限界も来る。
瞼がオレの意志に反するように落ちてくる。
『貴方の心はバラバラになってしまった』
『元に戻さないと貴方は永遠に悲しみを背負ってしまう』
『だから、抗わないで。身を委ねて』
聞き覚えの無い声が、三。
ああ、オレは眠ってしまったのか…。
なんだよ、オレは一体どうしたって言うんだ?
オレが一体何を忘れてしまったと言うんだ?
『それは苦しいことかもしれない』
『けれど逃げていては貴方が消える』
『恐れないで 怖がらないで』
一体オレはどうしてしまったって言うんだ―――――。
心身共に疲れ果てたオレは、また自分の知らない世界へと沈んでいった―――…。