イクセンの町で達の帰りを待っていたクラース達に不吉な知らせが届いていた。

それは他の町にいるアドリビトムが何人か行方知れずになっていること。
そして、風花の神殿以外の場所でも異変が起こっていることだった。






「…何が起こっているんだ…」
「クラース、私が他の町に行って様子を見てこようか?」
「いや…達のこともある。戦力を減らすわけにいかない」


嫌な予感が胸をよぎりつつも、クラースは祈るしかなかった。






どうか無事にあの子達が帰ってくるように




























「アンタなんかに構ってられねえんだよ!オレは仲間を捜しに来たんだ!!」
「そのお仲間達もいずれは同じ場所に行きますよ。先に行って待っててあげなさい」
「…冗談!!」



シンクは此処で男と出会ったはずだ。
ということは別れ別れになってしまった三人の所にそいつがいるかもしれない。
そう思うと気が気ではなかった。




ロイドやシンクはまだ切り抜けられる術を持っているだろうが、元々が後衛タイプのノーマの身が心配である。
壁役である前衛が傍にいないかもしれない彼女は魔力が尽きてしまえば危険だ。




はエルレインの魔法の猛攻をかわし、勢いよく彼女の懐へと飛び込んだ。




「…っ!!!」
「くらえ、
真空裂斬!!!


剣先からかまいたちが発生し、いくつもの斬撃がエルレインに斬りかかる。
流石に全てをかわすことは出来なかったようでエルレインはふらついた。



「今だ!!
獅子戦吼!

衝撃波で思い切り吹き飛ばされたエルレインは壁に体を打ちつけ、動きを止めた。
肩で息をしながら彼女が気絶したのを確認するとは更に奥へと走り出した。































「…もう限界…走れないし…魔力も…」



もつれる足は最早自分の言う事を聞かない。
詠唱時間の短い魔法ばかりを使っていたが魔力も集中力ももう残っていない。

ここが覚悟の決め時かと、ウルフの大群を目の前にしノーマは思った。



背後はもう行き止まり。
此処が最後の場所かとずるずると座り込んだノーマは、目の前のウルフ達を睨みつけた。



「どうせなら道連れだっつうの!!!くらえ最後の魔力!澄み渡る明光よ…


呪文を唱えようとしたその時、背後の壁に亀裂が走った。







「え?」






ドゴオオン、とノーマのいる位置より数センチ隣の壁は大きな音を立てて崩れた。




「ちょっ何よ〜!!!」

「…っつ……ん、ノーマ?」
「ロイっち?!」


崩れた壁から飛び込んできたのはロイドだった。
お互いの存在を認めた瞬間、二人は目を輝かせた。


「「丁度良かった!!あれなんとかして(くれ)!!…え?」」



一瞬は喜んだ二人だったが、相手に言った言葉を理解した後お互いの背後を見て状況を把握した。



「「おまえ(あんた)もかよ〜〜!!!」」



仲間が増えた、と喜ぶどころか敵を増やしただけと気づいた二人は再び冷や汗を流す事となった。










そして再び、強烈な破壊音がした。




「「げっ!!」」



今度は天井が崩れ落ちてきたのだ。








「…あたた…生きてる〜?ロイっち」
「…なんとかな…」

「…その声はロイドとノーマ?」


自分達の名前を呼ぶ声に顔を上げてみれば、砂煙の間から見慣れた姿が見えた。



「「シンクッ!」」




今度こそ助かった、と喜の表情を浮かべたロイドとノーマだったがシンクのボロボロになった姿を見るとそうはいかなかった。
そして先程と同じリアクションを取ることになるのだ。


「「お前もかよ!!!」」
「なにさ、いきなり失礼だね。それより一人足りないんじゃないの?」



シンクの言葉にノーマとロイドは周囲を見渡した。
敵はうじゃうじゃといる。

だけど大切な仲間が一人、足りない。






がいねえ…っ」
「やっぱりあいつ敵だったんじゃないの?」
「シンシン!!」







四面楚歌、と言った状況。
体力も魔力も尽きかけてきた自分達。











「クエスト失敗はクラースに怒られちまうぜ」
「もう一度その怒鳴り声が聞ければいいけどね」
「そんな弱気な事言ってるとマリりんにまで渇入れられちゃうよ〜?」



背中を合わせ、最後の力を振り絞り立つ三人。








「さあいくよ」
「OK」
「了解」




モンスター達が三人めがけて一斉に飛び掛った。

























「壮麗たる意志を今此処に!龍王月詠刃!!」




強大な斬撃と衝撃がモンスター達にのみ襲い掛かる。
三人を囲んでいたモンスターの群れの一角が崩れた。




「…今のは…」
「……ごめん!!待たせた!」

「「(ぴょん)!!!」」




崩れたモンスターの向こうから現れたのはだった。
三人を庇うように立ち、ノーマにオレンジグミを手渡す。



「ノーマ、これでリザレクションかけてくれる?これ最後のグミだから」
「いいけど…魔力使い果たしちゃうよ?」
「大丈夫、ノーマはオレ達で守るよ。な、ロイド・シンク?」


笑顔でそう言ったに言われた二人は頷いた。
ノーマはグミを食べ、全体回復魔法に全魔力を集中した。




「詠唱の邪魔はさせんなよっシンク!」
「誰に言ってんの、ロイド。こそ、遅れて来た分働いてもらうよ」
「おっけーおっけー。じゃあ行きますか」









「リザレクション!!!!」