「あたたた〜〜…んもー!か弱い乙女になんてことすんのよ…。ってあれ?皆?」
あたし、もしかして今一人??!
うっそぉ最悪!!こんなとこで魔物出てきたってブレス唱える暇無いじゃん!!!
「…まさかこんな仕掛けがあるとはね」
油断した。
もう結構古い遺跡だったから老朽はあってもこんな罠は無いと思ってたのに。
「いででで…あれ??何処だ?」
やっべえ、皆とはぐれちまった!
早く合流しないとな!!
奥へ、奥へと進む度魔物は出なくなってきた。
「…何故だ…?…どうして」
一番最下層の、一番奥の部屋。
「どうして…ここは聖域と同じなんだ?」
それはだけが感じ取れることだった。
あの聖域の中のようにとても澄み渡った空気。
不浄なものを近づけない神聖なる場所。
最下層の一番奥の部屋、つまりシンクの言っていた石版のある部屋。
此処は聖域と呼べるほど澄み切っていた。
「もしかして…これが…あるからか?」
は部屋奥の台座に祭られている石版に歩み寄った。
「これ…とても…凄い力を持ってる…」
「これはマナの結晶で出来てますの!!だからこの部屋だけマナが満ちているですの!」
目の前にある神々しい石版にすっかり気を取られていたとミュウは背後から近寄ってくる気配に気づけなかった。
「鼠が入り込んだか……」
「!」
振り返るとそこにいたのは神々しい女性だった。
「貴女は…?」
「私はエルレイン…神の意志を次ぐ者です。…貴方と同類の…ね」
女性の表情は全く読めず、声も抑揚が無く感情が無い。
しかし隙が無い。
はひとまず右手から武器を放せなかった。
「…同類…?オレと…貴女が…?」
「貴方から感じるマナ…。私もマナから生まれた存在なのです」
感情がまったく読めない瞳をした女性。
だけどその瞳はを捕らえて離さなかった。
必然的にの体は固まり、動けずにいた。
「私達のような存在はディセンダーと称されます。マナで創られ…神の意志を代行する者…」
「ディセンダー…」
「しかし貴方と私は対極する存在」
女は右手をかざすと何かをブツブツと呟き始める。
それが詠唱だと判った瞬間には光の槍が頭上から降り注いだ。
「プリズムソード」
「ッ!!!粋護陣!!」
ロイドに教わった防術が役に立った。
後一瞬遅れていたら…と思うと背筋に冷たい汗が流れる。
「ここで出逢うのは想定外でしたが…早めに危険分子は排除すべきでしょう」
『詠唱が速い…!!この人かなり強い!』
「己が運命、呪うが良いでしょう」
頬に一筋の汗が流れた。
「うっきゃああああ!!あっちいけ〜〜!!」
ノーマは走っていた。
狼のようなモンスター、ウルフに追いかけられてるからだ。
術士は強力な魔法が使える反面、長い詠唱を唱えなければならない。
それには膨大な集中力を要するし、その間無防備になってしまう。しかも敵が素早いなら最悪。
おかげでノーマはモンスターに決定的なダメージを与えられず、ただ逃げ回ることになっているのだ。
「…誰か〜〜!!誰でも良いから助けてぇぇ!!ロイっち、シンシン、ぴょん〜〜!」
「最悪だね…まったく」
シンクも珍しく額に汗を流していた。
格闘家が最も苦戦する相手は術士の魔法だ。
魔法防御力が低い格闘家にとって術士は最悪の相性。
しかも詠唱が速い敵なら尚更だ。
普段なら素早さで翻弄して、防御力の低い術士などすぐに倒せる。
しかしレベルの差なのか、相手の術士は詠唱が速すぎて近づく隙すら与えてくれないのだ。
「なんでこんなタイプの敵が此処にいるのかは置いておいても、タイミング悪く今僕の所に出てくるのかな」
「…っち…裂空斬!」
ロイドもまた苦戦していた。
目の前にいる相手は、魔法と剣技を兼ね備えた魔法剣士。
剣士の上級クラスだ。
剣技では勿論上回っているし、おまけに魔法まで使いこなす。
そんな強敵相手に楽勝とまではいかないだろう。
こうして各々が自分の苦手とする状況・相手との戦闘におかれていた。