「クラース!!」




「ロイド?それにまで。待ってるように言ったはずだろう?」


「年の近いオレ達の方が話し易いんじゃないかってマリーさんがね。兎に角シンクって人の容態は?」



「まあ命に別状は無いんだが…。少し怪我が多くてね。治療さえ終われば話せるさ」















何分か経つと待合室に医者が入ってきた。















「もう大丈夫ですよ。…でも一体どんな魔物にやられたんでしょうね…。火傷が多いんですよ」






医者の言葉にクラースさんが顔を顰める。









「火傷…?火系の魔物か…?しかし最初の調査では風系の魔物しかいなかったはず…」




「シンクに聞いてみようぜ。もしかしたら新種かもよ?」


「そうだな。よし行こう」

















コンコン








軽いノック音



それに返事が無かったのでそっとドアを開けて中を見た。













「何か用?」











そこには真っ黒なロングコートに深緑の髪が印象的な少年がいた。








少年を見るなりクラースは慌てた。






「こら!お前は重傷なんだぞ!大人しくベッドに戻れ」


「これくらい平気だよ。どうせ少し経てば治るのにアンタが大袈裟に此処へ連れてきたんじゃないか」






安静を、と言うクラースさんに反発する少年。






どうやらコイツが“シンク”なんだな。












「流石シンクだな〜!で、何があったんだ?」





おお、ロイド。
一瞬で話題を変えるとは大物だな、お前。














「その前に、そこの奴誰?部外者の前で話してもいいわけ?」



指差された…。
なんか…失礼な奴だな。










「この子は新しい我らの仲間だよ」







。よろしく…シンク、さん?後こっちが相棒のミュウ」

「ミュウですの〜!!よろしくですの!」








年、近いって言われたけどわかんねえからさん付けしてみたら、思いっきり怪訝そうな顔された。










「さん付けしなくても良いよ。どうせそんなに年離れて無いだろ?」











あれ?意外にいい人か?








まあでも今の台詞無表情で言われたけどね。
















「まあ関係者ならいいか。風花の神殿さ、四層目におかしなものがあったよ」





「おかしなもの?」













「台座に祭られた小さな石版。持って帰ろうとしたんだけど―――先客がいたんだよ」















シンクが拳を握り締める。










「暗くて顔は見えなかったけど、声からして男なのは間違い無いね。光の晶術を使ってきたんだ」








それで火傷傷か。納得。














「奴はこうも言ってた。



“我らの邪魔をするものは何人たりとも近づけさせん”





とね。どうやらあの石版、何か意味があるみたいだよ。コレが調査結果。満足?」








「ああ、充分だ。最近色々不可解な事が起こり始めていたからな。それも何か関係がありそうだ」




















「では次のクエスト内容は決まりだな。“石版を持ち帰る”だ」




















結局、シンクも一緒に診療所を出た。


怪我酷いのに良いのか?って聞いたら








「外傷なら晶術やアイテムで回復出来るからね」










だって。そりゃそうだ。

クラースさん…アンタよっぽどテンパってたのか…。















「なあクラース!俺そのクエストやりたい!」



「その…ってこの風花の石版のことか?ロイドかー…」


「なんだよ、その不安ですみたいな顔は。じゃあ!一緒に行こうぜ」








「え?何が?」




シンクと怪我談義(?)してたから聞いてねえんだけど。





「だからこの石版取りに行くってクエストだよ。一緒に行こうぜ?」


「ま、オレで良いなら」
















「ちょっと待ってくれる?それ、僕も行くよ」







突然のシンクの名乗りにオレやクラースさん、ロイドがシンクを見た。













「シンク、お前帰って来たばっかりだろ?三日もあの神殿にいたんだぞ?ゆっくり休んだほうが…」

「だからこそ、僕はあの中の道がわかるからね。この二人だけじゃ心配でしょ?」



「…うむ…」





なかなか頷いてくれないクラースさんに最後の一押しと、オレも言ってみた。







「どうしてもまだ不安だって言うならノーマも一緒で良いかな?回復や魔法使える人居た方がいいだろ?」










オレがそう言うとクラースさんはようやく了承してくれた。

















「いいか、あまり深追いはするなよ。シンクの見た奴がどんな奴かもまだわからないんだ」





「だいじょーぶだって、クラちん。あたしがついてるし、シンシンだっているじゃん」
「アンタがいるから不安なんじゃない?」
「なんだとこら〜〜!!」








おいおい、二人共。


クラースさんの溜息が余計深くなったぞ。












「まあ無理だと思ったら撤退するよ」





「…嬉しそうだな、












だってこれ初めての“仲間との冒険”だもん。













「頑張るですの〜〜〜」
「おう!行こうぜ!」





「行って来ます!!」