「小島…って言ってもそこまでどうやって行く?」
「それは抜かりありません。前もって依頼しておきました」
「依頼…?」



ジェイと話しながら海まで歩いていると、船が一隻見えてくる。
その船の上で何やら準備をしている男の影、は段々と見えてくる姿に口元を緩ませた。



























「セネル!!!」

「……?!」







どうやらセネルはがいるということを知らされていなかったらしい。
久し振りに会った仲間の姿に目を丸くしている。



「どうも、マリントルーパーさん。今日はよろしくお願いします」
「…急に船を出してくれなんて依頼してくるから何かと思えば…そういうことかよ」


そう、ジェイはセネルに頼んでいたのだ。


以前、エヴァでとセネルが一緒に行動していたのをジェイは見た。
セネルがマリントルーパーだと言う事に気付いた後、手を回しておき彼がどこの港にいるのか調べておいたのだ。

それで、今回に至る。




「近くに来てくれていて助かりましたよ。エルグレアに今は定住しているのだとか?」
「しばらくはシャーリィと姉のステラと一緒に暮らす事にしたんだ。だが、良かった。お陰でとまた少し旅が出来るな」
「オレも嬉しいよ。セネルがいれば心強い」


パンっと手を叩き合せ、再会を喜ぶとセネル。

だが、ふとセネルはキョロキョロと見回した。


「?どうかした?」

「スパーダはどうしたんだ?今回は一緒じゃないのか?」

「「う…」」



その質問にはもジェイも口を噤んだ。














実は出かける際、パーティメンバーを組むか組まないかで一悶着あった。


今回は一度、軍基地に例の乗り物があるかどうか確認をし、次に雷の精霊がいると言われている雷のモニュメントへと旅立つ。
勿論、が契約出来なければ無駄足となる旅なのだが。

もし上手くいけばまた雷のモニュメントから直接軍基地へと向かい、そしてレディアへと出発する。


かなり回り道の多い旅路、出来れば少人数で出向いた方が得策だろうと思った。










「二人で行くだ〜〜!?なんっで俺は行っちゃ駄目なんだよ!」


「いや、駄目ってわけじゃなくてさ〜。今回はちょっと賭けみたいな旅だからあまりこっちに戦力を持っていくのも躊躇われるって言うか…」

「正直、乗り物を手に入れるだけですからそんなに大人数いらないんですよ。乗り物が手に入ってからでも良いじゃないですか」


「だけどよー!!!」























納得させるのに、小一時間を要した。
連れて行けと言う要望にばかり答えていると不平等が生じると言い、クラースが


“同行は求められた者だけ、立候補は無し”


と先日アドリビトムにお触れを出したので説得するのは一人で済んだのだが。

















「…そうか。色々あったんだな(二人から苦労の色が現れている)」

セネルは二人の顔色を見て、深くは聞いてこなかった。


「基本的にスパーダはオレがイクセンに連れてきたわけだしなあ…。残ってろってのも変な話だし」
「けれど、今回はもしかしたら収穫0の可能性もあるんです。大勢引き連れて何もありませんでしたじゃ面目が立ちません」



幸い僕の調べによれば手強いモンスターはあの小島にはいない、とジェイは言う。



「兎に角、先ずはその乗り物の発見だな。じゃあ二人共乗ってくれ」
「よろしくっ」
「よろしくお願いしますよ」



出発準備が整い、エンジンがかかる。
波の上を風を切って走りながら、船は南東にある小さな島へと向かって行った……。

































「ここが…創世暦時代の軍基地跡…」




足を下ろした大地は、立っているだけで身震いがしてきた。

戦争がどう終わったのかは知らない、だが施設はそのまま残されている。
まるで、今が戦時中の真っ最中かのように。



「流石に少しガタが来てますね…。その辺崩れやすいので気をつけてください」


建物や、荷物などは長い年月の所為で風化し脆くなっている。
これではもし飛行機などがあったとしても乗れる状態なのかどうかが心配だ。




「あ…ジェイ。どうしよう見張りがいる」




門の前には一人の兵が立っていた。
格好から察するに、エヴァの王都兵。

軍基地跡となった今でも、よからぬ輩が侵入しないよう警戒しているのだろう。






「エヴァの兵なら簡単ですよ。さん、ジェイドさんに連絡を」
「あ、そっか」





音機関を取り出し、ジェイドへ通信を繋ぐ。
数秒してから、画面に懐かしい顔が映った。





『どうしました?』


「大佐、オレ達今軍基地跡にいるんだけど―――」


























ジェイドから話を通してもらったお陰で、兵はすんなりと達を通してくれた。



色々な建物を回り、探してみるが何処にも目的の物は見つからない。
しかもどれも乗り物を収容出来るような広さは無く、期待はずれかと肩を落としたその時不自然な箇所があった。





「…なんだコレ」




それは荷物の影になっていて最初は気がつかなかったが、一本の苗木が置いてあった。
何故こんな所に?とも思われたが先程見て回った施設の近くに丁度この苗木サイズの穴が空いていたことを思い出す。



はそれを抱えて、穴のあった場所まで走り出した。










「苗木?なんでそんなもんが此処に」

「明らかに不自然ですね…」

「これをここに…と」



まるで測られたかのようにピッタリと穴に収まった。
しかもはめ込んだ瞬間、何処かでカチっという音まで聞こえた。





「ん?何か聞こえないか?」
「何かが作動するような…」


ゴゴゴゴっと重い物が動かされるような音。
そして少し揺れる地面。



辺りを捜索すると、なんと地面に地下へと通じる階段が出ていたのだ。






「…成程、こうやって隠していたわけですか。此処なら何かありそうですね」

「わざわざ隠してあるくらいだもんな」




三人は地下へと降りて行った。




















「…っ…んな…」

「すげえ…」

「これは……」







暗い地下道を抜けて、辿り着いた先にあったのは巨大な乗り物だった。
この話を持ってきたジェイですら目を見開いて驚いている。




「これは…かの有名なベルセリオス博士が作ったと言われるイクシフォスラー…?凄い…こんなものが残されていたなんて」



見れば外観は少し埃かぶっているだけで、傷など付いてなく真新しい。
恐らく戦争中は開発途中で、実際使われたことは無いのだろう。





「やった…やったな、ジェイ!!」
「ええ…!これで第一段階はクリアです。後は燃料だけですね」
「雷のモニュメントだったな。此処からどっちの方向だ?」

「雷のモニュメントは…この小島から西に真っ直ぐ行った大陸にあります」

















再びセネルの船に乗り込み、西の大陸へ到着した三名。
近場の港に船を着け、徒歩で雷のモニュメントを目指す。





「しかし、雷の精霊かあ。本当にいるのか?」
「そうですね、精霊と言う存在は普段人間の前に簡単に姿を現すものではないそうです。もし行っても出てこない可能性も有り得ます」
「まあ、行くだけ行ってみよう!」





見えてきた雷のモニュメント。



入り口前に誰かいる。
三人は足を止めた。








「ううむ…侵入者用のトラップか…。しかし…」




何やらブツブツと独り言を言っている女性。
扉の前をウロウロとしている。

どうやら中に入りたいが扉が開かないので困っているらしい。




「何してんだろ、あの人」
「僕らと同じ目的か…。もしくはこのモニュメントの調査に来た人でしょうか」
「調査?」
「此処から一番近いセシリアと言う街は学者が多いそうです。そこから来た人ではないかと」
「成程」



今だ扉を開けられず困っているその女性。
此処で立ち止まっていても仕方が無いと、三人は女性に声をかけることにした。





「あの―…何してるんです?」




「!…貴方達見かけない顔ね。旅人?」


銀色の髪、男物の服に身を包んだ女性は三人を見て驚いた。
達が近づいて来ていたことに気付かなかったようだ。


「ええ。見たところ貴方此処へ入りたいみたいですが、扉が開かないんですか?」
「そうなの。此処は精霊を奉る場所だって聞いていたから是非調べてみたいと思ったんだけれど」




堅く閉ざされた石の扉。
どうやっても開ける術がわからない。



は辺りをキョロキョロとしていると、草陰にくぼみのある台座を発見した。
そのくぼみは人の手形のような形をしている。




「ジェイー!」
「どうかしましたか?」

「コレ見て」




呼ばれたジェイはその台座をマジマジと見つめた。
かすれてはいるが古代文字のようなもので何か書かれている。



「…これは…古刻語?いや違うか……スイマセン、貴女」
「私かしら?」
「これ、読めますか?」



女性は台座を見つめ、手を字に滑らせるように当てるとゆっくりと言葉を口にする。



「……マナ…持ちし者…?の手を当てよ…。最初が擦れていて読めないけれどそう書いてあるわ」
「マナ…?だったら大半の者が持っている筈ですよね」



試しにジェイが当ててみる、しかし何も起こらない。
続いて女性も当ててみた、がやっぱり無反応。
セネルも同様、台座はなんの反応も示さない。



最後にが置いてみる。
一瞬台座が光った。


「…!?」

「まさか!」



扉に目を向けてみると、あの石の扉がゆっくりと開き始めた。





「本当に貴方は興味深い人ですね」
「?」



ジェイの言葉にが首を傾げた。





「……フフ…フフフフ」



いきなり肩を震わせ、笑い出す女性。
三人の視線が集まる。



「ハハハ!素晴らしい!!!創世紀時代の建物にこのような仕掛けが施されていたとは!!!
 
 流石精霊を奉ると言われているだけあるな!中にはまだこれ以上の素晴らしい仕掛けがあるに違いない!!

 おい、お前達!私も同行させてもらうぞ!!」




「は?別に同行しなくても勝手に入れば良い「中にもこういうトラップがあるかもしれないと言っているだろうが!」


セネルの言葉を遮って物凄い勢いで詰め寄る。
次にを見て、女性は言葉を続ける。


「ひぃっ!」
「どうやら、お前なら此処の仕掛けが解けるようだからな。さあ行くぞ!!」




三人を圧倒して、女性はさっさとモニュメントの中に入って行く。




「何をしている!早く来い!!」

「「「はい!」」」