里の一番奥に構える家の前に辿り着くとジェイが道を譲るように横へ移動した。


「此処が頭領の家です」

「お、そんじゃお邪魔しまーす」



ロニが戸に手をかけ、開けた瞬間中から大量の刃物が飛んできた。


「いぃ!!?」




ギリギリ全てかわしたところに、今度は屋根から落石。
しかも全てが両手で持つのがやっとと言う大きさの石ばかり。



「なあ!?」




死ぬ思いで全て避けたロニに最後待ち構えていたのは足元に穴。
入り口の刃物、屋根の落石を全て避けた先の場所に計算されたように作られた落とし穴。

為す術無く、ロニは深い穴へ落ちて行った。









「ロニ―――?!」

「生きてるか――――?」





「…なんなんだよこの家はぁ!!」








穴の底で叫ぶロニ。
入る前からボロボロである。




「正面から入るとトラップがあるんですよ。忍の基本ですね」
「なら早く言え――!!!」

「言う前に貴方が入ったんじゃないですか」




あのタイミングではジェイは口を挟む気は無かったような気がするが…。
そう思ったがスパーダは敢えて口をつぐんだ。


こいつだけは敵に回さないほうが、身の為だ。


そう悟ったからである。











「こっちが本当の入り口です。僕と同じ様にしてください」



ジェイは家の横に回り、壁に背を当てる。
すると壁がぐるんと一回転し、ジェイの姿が消えた。



「へー面白えー!」
「何を呑気なことを…。なら最初からそう言えってんだ」
「あ、ロニ這い上がって来たな」


泥を払いながらロニはブツブツと呟く。
ジェイに嵌められたのをかなり根に持っているようだ。


今度はジェイと同じ様にして三人共が家の中に入って行った。






















「…中は…普通みたいだね」

「いいや、油断すんな!そのうち壁から矢が飛んできたり、床には針山があるに違いない!!」

「一瞬で用心深くなったなあ〜…」




中は至って普通の住まい。
一段高くなった所にジェイの靴が置いてあり、此処で履物を脱ぐのかと三名は理解し同じ様にする。





「こっちですよ」



ジェイの声が奥から聞こえる。
先程の一件もあってかロニは先等を歩こうとしない為、が前へと出る。
その後スパーダが続き、最後にロニの順で部屋へ入って行った。







「ようこそ、イクセンからの客人」



三人を迎えたのは若い女性だった。
すずと同じ様に忍の服に身を包み、上座に正座している。





「うおっ!!なんて美しい!!良ければ私めにお名前などをお聞かせください!!」


女好きのロニが、“若い女性”と聞いて動かないわけがない。
一目散に女性の前に行き、手を握ろうとする。






「…
作力符!!





だが大量の札がロニに飛んで来て女性から距離を置かせる。
どうやらこの札は女性が操っているらしい。
近距離で喰らったロニは大ダメージだ。







「…なんなんだい、このスケベ男は。ジェイ、アンタが見込んだ奴ってまさかコイツじゃないだろうねえ?」
「そんなわけ微塵もありません。それは彼の連れです」


黒髪を結い上げ、胸を強調した服に身を包んだ女性はロニを睨んだ後今度はスパーダを見た。

実はロニが速くて誰も気付かなかったが、密かにスパーダも巨乳な彼女に反応していた。
自分に視線が集中して居心地が悪くなり、隣にいたを前に押し出す。


「な、何さスパーダ!」
「いや、なんとなく…」


今度はが見られる番だ。
じいっと視線をぶつけられるが、なんのことはないただ見つめ返すだけ。









そうして視線の交わし合いが数十秒続いただろうか。

女性が先に目を離した。








「ふっ、流石ジェイの連れて来た奴だよ。アンタ、いい瞳してる」

「…は…はあ」

「あたしは藤林 しいな。妹のすずが迷惑かけたね。でも里の為を思ってのことだから許してやっておくれよ」
「え…あ、別に何も無かったし。オレは、こっちはスパーダ。で、さっき飛びついたのがロニ」
「まあ座って、お茶でも出すよ」
























円卓にお茶が人数分と、茶菓子。
緑茶が初めてのメンバーは一口飲んで驚いていた。


「本当なら頭領に会わせてあげたいんだけど、生憎今ぎっくり腰でさ。起き上がれないんだ。だからあたしが代理をしてるんだよ」
「へえ…。それはお大事に…」

としいなが呑気な世間話に花を咲かせそうな勢いだったので急いでスパーダが介入した。


「ってんなこと言ってる場合じゃねーだろ。俺達はスラクタウンに行かなきゃいけねえんだ。なあ、どうにか迷いの森を抜ける方法は無いのか?」

「ああ、そうでした。この人達そもそも迷ってたんでしたね」


呑気に茶飲みに来たんじゃねえんだよ、とスパーダが言うとしいなが腕を組みながら考える。


「んー…あの森は厄介だからねえ…。あたしらは慣れてるから大丈夫だけどあんたらじゃそうもいかないよねえ」
「早く行かないと行方不明者に何かあったら…」



そう言っては拳を固く握り締める。

その様子じっと見ていたジェイが立ち上がった。



「でしたら、僕が道案内役をかって出ますよ」
「ジェイ!?……アンタにしちゃ珍しい事するね」
「まあ、遺跡の調査はしてみたかったですし。急ぐんでしょう?」



「……本当?」



の瞳がジェイを映す。
笑顔で頷き、ジェイは答えた。



「任せてください」

































「気をつけて行って来な。ジェイの事、頼んだよ」
「あ〜〜〜どうせ付いて来るんならナイスバディのしいなの方が良いぜ〜。こんな生意気な奴じゃなくてな」
「僕が気に入らないのなら、どうぞお好きに進んでください。まあまた迷うのは目に見えてますけど」
「・・・・・!!!!」





しいなは小さな包みをに手渡した。
これは?と首を傾げると困ったら使ってみなと言われた。

すずからもグミやボトル系アイテムを幾つか貰った。
ありがとう、と素直に言うとすずは目線を逸らす。


「?」
「ははっ、こらまた珍しいねえ。すずが照れてるなんて」
「……」





見送る二人に手を振りながら、今もう一度迷いの森へ足を踏み入れる。
だけど今度は大丈夫だ。


まだ見ぬスラクタウンへ意気揚々と歩き出す。