「ぴょん!!こっちこっち!」
ノーマに呼ばれるまま着いた場所は小さな宿屋。
他のアドリビトムを紹介してくれるという話でここに来たけど、皆いるのかな?
「あ、いたいた。あそこ!」
ノーマが宿の中を指差すけどいるのは普通の人や宿の人くらい。
武器を抱えたアドリビトムらしき人はいないぞ?
「ノーマ?オレには見当たらないぞ」
「いるって、ほらあっこ」
「、カウンターの奥見てみろよ」
ロイドが言う場所には宿の女将さんらしき女性と……頭をタオルで包んだ従業員くらいなんだけど。
え?まさかあの女将さんが??!!
「え?まさかあの女将さんがねー…人って見かけによらないんだ」
「違う違う。目線もっと左。あの頭にタオル巻いてる奴だって」
あ、そっちか。
「おい、ロニ!!」
ロイドが声を掛けると従業員はこちらへ振り返った。
「なんだロイドにノーマ。俺に何か用か?」
「新入りを紹介しようと思ってねん♪ロニィ、今忙しい?」
「いや、少しなら大丈……」
身長の高い色黒、銀髪の青年はオレを見るなり固まった。
「お嬢さん!!!是非、宿ならウチへ!!何、困った事があればこのロニ・デュナミスにお任せを…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
え?もしかしなくてもオレに言ってる?
うんうん言ってるね、だってがっちり両腕掴んでるもんね。
「ロイド、この人もしかして目が悪いとか、妄想癖があったり?」
「ロニは視力いいぞ〜。1km先の女の人でも美人かどうかわかる」
「妄想癖はあるかもね」
「ふわりとした髪に澄んだ瞳…ああ、なんて可愛らしい方なんだ…」
駄目だこの人。目がイっちゃってる。
「もしもーし、悪いんだけどオレさ「少し男勝りな所があるんだね…。それも勝気で素敵だ」……おーい」
オレはノーマ達に視線を送ってみる。
ノーマは面白そうに声を潜めて笑っているし、ロイドはやれやれと肩を竦めている。
助けは求められないのか、と思った。
しかし、そこへ救世主が現れた。
「おい、ロニ。仕事サボって軟派とはいい度胸だな」
ロニ、とやらの真後ろに立つ影。
その声と共にロニの頭上に何かがゴン、と落ちオレは解放された。
「ママママ…マリーさん…」
「まったく…、よく見てみろ。その子は男だろうが」
ロニはオレをもう一度、頭の上から足のつま先までじっくりと見る。
「…男?」
「男」
「さんは男ですの〜♪」
ががーーーん!!!
そんな効果音がロニの頭上に見えた。
「悪かったな、悪い奴じゃないんだが手が少し早くて見境が無いんだ」
「フォローしてるようでしてないって、マリー姉さん…」
長いポニーテールを靡かせ、格好良く立つその女性は見るからにアドリビトムだった。
腰には剣を挿してあるし、鎧を身に着けている。
先程ロニの頭に落ちてきたのはその人が持っていたフライパンだった。
「話は聞いてるよ。アンタが新しく入る事になるだね?」
「うん、よろしく」
「アタシはマリー・エージェントさ。普段は宿屋で料理とか作ってるよ。あっちはウチに住み込みで働いてるロニ」
「マリーさん…いつ仕事からお戻りに…」
「ついさっきね。戻ってみればまた客に手を出してる奴がいると思えば…。まさか男の子にまでねえ…」
「ち、違うんです!!これは不可抗力っていうか!!!」
「ぴょん、女の子に見えなくもないもんね〜。髪切っちゃえば?」
「こんなことがよくあるなら考えるよ」
「さっきは悪かったな。俺はロニ・デュナミスだ。俺もアドリビトムだぜ」
「。まだ見習いだけどアドリビトムに入ったんだ」
第一印象はあまり良くなかったが、話しているとロニは兄貴タイプらしくすごく面倒見が良い奴だと解った。
「なんか困った事あったらいつでも頼れよ。先輩として力になってやるよ」
マリーも料理が凄い美味くて、姉御肌な女性。
「まだまだ慣れないだろうけど、頑張りなよ」
「この町のアドリビトムはもう全員か?」
「いや、後一人いるんだけど…今他の町にクエストで出てるんだ」
「どんな人?」
「シンクっていうんだけど」
「クラースさん、クエストしたいんだけど」
「おや、随分やる気満々だな。今あるクエストはこれだけだ」
・白雲の社にいるバットを十体倒す
・鉄を三個入手してほしい
・大樹ユグドラシルの森三層目にいるメドゥーサを倒す(これはマリーも同行する)
出来そうものを探してみるが、まだ見習いのオレは一人でクエストをこなさないといけない。
慎重に出来るものを選ばないとな。
「さん、一枚見落としてるですの〜」
「ん?」
ミュウが差し出すそのメモに書いてあるクエストは
・暁の里へ行き、使者を迎えに行く
「暁の里?」
「にはそのクエストは無理だな。暁の里はここから少し離れた所にあるが、其処へ行くには迷いの森を通らなくてはいけない。あそこは魔物の巣窟だからな」
「使者って言うのは?」
「近いうちに各町のアドリビトム達で会合をすることになってな。その連絡役だ」
此処以外の町か…。
其処にも他のアドリビトムや、色んな人間がいるんだろうな。
いつか、行って見たい。
「じゃあこのクエストやってくるよ」
「バット十体か?白雲の社はまだ調べていない場所があるぞ。何があるかわからん」
「大丈夫だって。だってこれ一層目にいるんでしょ?Lv上げにもなるし」
「そうか、じゃあ行って来い」
初めて行く場所なので少し興奮はしている。
でも認めてもらう為の一歩だから、しっかりこなさなければ。
「行くぞ、ミュウ」
「はいですの!!」