森から帰ってくると何故か怖い顔をしたシンクとスパーダに囲まれた。
あまり痛くはなかったが一発ずつ拳骨をくらって、「今度からは誰かに言ってから行け!」と怒られた。




だって皆まだ寝てたんだもんよ…。










久々にイクセンに戻ったことだし、クエストでもやろっかなーとギルドへ向かうとクラースさんが暗い顔をしていた。



「どしたの、クラースさん?なんかマズイことでもあった?」
!!……いや、そういうわけでも…ないわけでもないんだが」
「どっちだよ(笑)じゃあ、何かあったんだね?……もしかして、またオレ関係かな?」





そう聞くと、クラースさんが黙り込んだ。

その様子さえ見ればもう解る。


石版関係の、クエストだね。






大丈夫、オレはいつでも出発出来るよ。












「クラースさん、見せて?」
「……」
「大丈夫、これがオレの役目だから」





苦笑いをしながらクラースさんは一枚の紙を手渡した。

そこには“スラクタウンへ派遣”との文字。



そう言えば、エルグレアに行く前にこの町でも行方不明者が出てるってあったっけ。
でもあれから結構経ってるのに…もしかして悪化?


「これ、前もあったよね?まだ見つかってないの?」

「ああ…というか、この町にはギルドは無いんだ。だから最初に行方不明になったのは旅人だったんだが…。
 その後、旅人は廃れた遺跡の前で倒れているのを発見された。そこでスラクタウンの若者が何人か調べに行ってしまったんだ。
 そしてその後消息不明、他所から派遣されたアドリビトムも…同じ様に」


と言う事はもう結構な人数がいなくなってるということか。
あまりのんびりしてられないみたいだね。



「おっけ、行くよ。オレ」
「…戻ったばかりなのに、すまない」
「ううん、多分戻って来たのはこれの為だったのかもしんない」



きっと、オレが戻ってこなきゃいけない気がしたのはこのクエストがあったからかもしれない。
皆の顔も見れたし、もう大丈夫だ。




「じゃあ早速出発準備しよっかな。じゃあね、クラースさん」
「…!!!」



ギルドの扉を開けようとした瞬間、呼び止められた。








「気をつけて…行って来なさい。スラクタウンへ行くなら…迷いの森を抜けるんだ」

「……行って来ます!」
































バタバタと足音が響く。
この足音は…かロイドだな。

こんな荒々しい走り方じゃノーマではないし、シンクは基本的走らない。
スパーダって奴は此処にいるし、間違いないだろう。



扉の前で足音が止まった。
入ってきたのは、やっぱりだ。

ん?武器や道具を完璧に準備してんな…。クエストにでも出んのか?
ってことはパーティ編成に来たのか?





「っスパーダ!」


「おお、どうしたよ。お前準備万端だな」
「うん、次のクエストに行くんだ。スパーダも行こうよ」
「おおいいぜ。今度は何処行くんだよ?」








「スラクタウン」









「何――――――!!!!!」
「わあ!吃驚した…どしたのロニ」



は!!つい大声出してしまった。
だが、今のは出さずにはいられんだろ!!

スラクタウンって、ちょっと行ってはい終わりって言えるような距離じゃねえぞ!!
あの迷いの森を抜けて、隣の大陸に渡らなきゃいけない場所だぞ?!





「お前また遠出すんのか?!昨日帰ったばっかだろ!?」
「いやーあははは」
「笑って誤魔化すな!」







ったく…あの迷いの森がどんだけしんどいか解ってんのかこいつは…。
下手したら帰ることも出来なくなる程大変なのに…。






「俺も行く!!」


「へ?」
「は?」






「俺もついていくってことだ。俺なら少しだが回復魔法も使えるし、何より旅経験はお前らより上だ」
「え…?でもマリーさんの手伝いとかさあ…結構な長旅だよ?」
「マリーさんにはちゃんと言っておけば大丈夫だ。それよかお前ら二人だけで行かせる方が心配だっつの」



そうと決まったら旅支度しなきゃな。
ここんとこしばらく遠出してないから新しく荷物もそろえなくちゃならねえし。忙しい忙しい。







「……普通パーティ編成って依頼しねえと集まらないんじゃねえの?」
「そうなんだけどなあ…」
「お前の場合は向こうが依頼してくんのな。“一緒に行かせろ”って」





































結局、男三人で旅ってことで決定。
なんか華がねえよなあ…。まあ遊びに行くわけじゃねえから下手な事言えねえけど。


あの後大変だったぜ…。


聞きつけたロイドやシンクが怒鳴り込んできたからなあ。




『なんでロニが行くんだよ!!俺が行く!!』
『ロイドやロニより僕の方が絶対良いよ!!今からでも遅くないから代わりなよ』






イクセンのアドリビトムに欠員が出ることは望ましくないらしく、二人以上の同行は却下された。

まああのシンクって奴が来たら…俺は確実に馬が合わなかっただろうなあ…(某聖冠隊長属性だし)

ロイドも悪い奴じゃないんだが…今回はロニの方が確かに良いだろう。
回復役が全くいないのは流石に危ないしな。










「みゅっ。さん、これマリーさんからですの」
「お?なんだろ…あ!食材だ!」
「こりゃ助かるな。よし、旅の最中にロニ様特製スープを披露してやるぜ!」「わーい♪」「わーいですの♪」




呑気だなあ…。



そういや、迷いの森って言えばこの大陸の上でも結構な旅人泣かせのダンジョンって聞いたけど…大丈夫かね。
確実に何か起こりそうな気がする…。








「スパーダ?どしたの?」
「…あ、いや。なんでもねえよ」

「それじゃ、出発だ。ロニ、最初はどっち?」
「町を出たら東に真っ直ぐだ。そしたら川が見えてくるから後はその川沿いを上って行けばいい」





こうして、俺達はスラクタウンへと出発した。