二日目………リオン・ワルター・シンク・クラトス











おいおい…幾らなんでもコレは無いんじゃない?
前もってルカ達に感想を聞いておいたとは言え、予想の範疇を軽く超えるんだけど。

この屋敷のデカさ。


僕意外の三人は絶句してる。
は二日目だから慣れたもんだね、我先にとドアの前まで行ってる。
僕はドアを開けようと奮闘するにゆっくりと追いついた。




「中もまた…取り合えずは寝床の確保かな」


マメなガイは屋敷の間取りを簡単に書き込んでいた。
それを見た時はぎょっとしたけど、本当に広いよこの屋敷…。

王家が三つも揃って、何やってるのか疑いたくなったね…。











を連れて二階に上がればドアがずらっと並ぶ。
ドアの一つに“ジョニー・ガイ・リッド・ルカ”って書いてあったんだけど…まさか一緒の部屋で寝ろと?
僕はまだしも、あの二人(リオン・ワルター)の嫌がる顔が浮かぶよ。




「って…クラトス何読んでるの?」


気付けばクラトスが何やら黄色い本を読みながら歩いている。
表紙には“子守日記”と書かれていた。
……こんなことするのってガイくらいだよねえ。


「ガイに渡された。参考になるだろうと」


やっぱり…。まあ、良いけど。
読んでみろと渡され、1P目を見てみる。
昨日の献立とかまで書き込んであるよ。


…ん?この注意ってとこ…





をひとりにしない”






どういうこと?

そりゃああんな小さいんだから目を離すなってのも解るけど、それこんなに要注意なわけ?
敢えて書かなくても…あ、まだ続きがあった。



“寝かしつける時は人がいる部屋で。無人の部屋に置くと泣き出す”



……ああ、そういう意味でひとりにするなってのね。
泣かすな、と言ってるのか。







本を閉じると、クラトスがの手を引きながら階段を降りている姿が目に入った。
あんな姿になっても根底は変わらない、あいつ。



泣かせないよ。


絶対にね。























「で、今日の夕食係なんだけど…クラトスで良いよね」
「…何故…私なのだ?」
「あのお坊ちゃんズ料理出来ないからだよ。僕もあんましたことないし」
「……」



肩を竦めてキッチンへ向かうクラトスを見送りながら僕はを連れて談話室へ向かう。
談話室では物凄く距離を置いたリオンとワルターが絶対目を合さないように反対を向き、自由に過ごしていた。

まだまだ日は長いのに…これじゃあ気が思いやられるよ。




「りおん、ごほんよんでりゅの?」
「ん、ああ。は字は読めるのか?」
「よめりゅよ!」


リオンの膝によじ登ったは自慢気に本を音読し始める。
知識は大人のままって言ってたっけ。



あ、何処からか陰の気が流れてくるんだけど。



此方に振り向いてはいないものの、どす黒いオーラを醸し出してる男が一人。
楽しそうにしてるリオン達が気に食わないんだろうな…。

あーあ、苛々してるの丸解り。
地団駄踏んでるし、指がずっと机叩いてるし。






「おい、夕飯の支度が出来たぞ」



その言葉にが走って食堂へ行った。
ようやくこの重い雰囲気から逃れられると思い僕も後へ続く。




「んきゃーーーーーー!」

歓喜の悲鳴が聞こえる。
が椅子の上で目を輝かせている。


今日の献立はマーボーカレーにコンソメスープ、フルーツサラダ。
あ、お子様はカレー好きだよね。



「食後にプリンも作ってみた」


「ぷりん♪ぷりん♪」
「……プリン」


何気にクラトス子供のツボを得てるよね…。









「ごちしょーしゃま!くらとしゅ、ぷりんたべていい?」
「ああ。お前達はどうする?」

「俺はいらん」
「僕も」
「………ぼ、僕も遠慮する…」


約一名、実は欲しいんじゃない?
そうか、と気にせずクラトスはプリンを冷蔵庫から取り出しわざわざ生クリームやフルーツまで添えての目の前に置く。
あいつ甘い物大好きなんだよなー…。全力で喜んじゃって…。



「くらとしゅ、おいちぃねー」
「そうか。ゆっくり食べろ」
「…みんなはたべにゃいの?」



自分だけが食べていることに気がついたのか僕達を見回す。
まあ嫌いじゃないけど、そんなに美味そうに食べられると見てるだけでもう結構満腹なんだよ……って



は隣に座っていたワルターに一口分のプリンを差し出した。



「わりゅたー、あーん♪」


!!!!!


おいおい、。相手を見て……って、


意外とすんなり食っちゃったよアイツ!!!!!!!!




「おいちぃ?」
「まあ、悪くは無い」
「えへへー♪」



うわー…なんか凄いもん見ちゃったよ。


また嬉しそうにプリンを一口食べたは今度は逆隣のリオンに差し出した。



「りおん、あーん♪」
「…っ」


あーあこりゃ形無しだね。
食べさせられたこともだけど、プリン食ってからがまた幸せそうな顔して……。



勿論僕やクラトスにも同じ事してきたけどね。
























食事が終われば風呂に行こうとが言い出した。
だけど、他人と一緒に風呂に入りたがらない奴が二人は確実にいるんだけど。
あ、僕は決定なわけ?もうほぼ引っ張られるように風呂へ連れて行かれる。




「うわ…風呂場もまたでかい…」
「りおんとわりゅたー、はいりゃないの?」
「あいつ等は一人で入るそうだ。ほら、来なさい。まずは体を洗うぞ」



クラトスってほんとあのロイドを育てただけあるよ。
滅茶苦茶父親やってんじゃん。



「くらとしゅのせなか、がありゃうの」
「そうか。では頼むとしよう」
「あいっ。んちょ、んちょ」


うわ、やばい。幻覚が見えそうだ。
何処のほのぼの親子だよ。
クラトス、昔を思い出してるのか知らないけどちょっとじーんと来てない?



「できちゃの」
「ありがとう。じゃあシンクと一緒に湯船に入っていなさい」
「あい」



寄って来た小さい体を抱き上げゆっくりと湯船に浸けると気持ち良いのかだらしない笑みを浮かべた。
別に小さいのが嫌ってわけじゃないんだけど、大きい時を知ってるだけにギャップがね…。
少なくとも、ベタベタ人にくっ付くよりくっ付かれる方だったし。


「しんく、もうでよ」
「あ、そうだね。…じゃあ十数えたらいいよ」
「いーちぃにーぃさーん………もういい?」
「3までしか数えてないじゃない」
「ぶー。よーんごーおろーくぅしーちぃはーちぃきゅーぅじゅー!!」


元の姿になった時覚えてるのかな、この日のこと。