次の日、朝食を作る為早く起きた僕は部屋の人達を起こさないようにそっと梯子を降りた。
下の段のガイも向かいの二段ベッドのリッドとジョニーもまだ寝ている。
だけど、だけむくりと起き上がった。
「、まだ寝てても良いんだよ?」
「もーおっきしゅりゅ。りゅかは?」
「僕はご飯作ってくるから」
「もおてちゅだいしゅりゅ」
「ええ?うーん……(大丈夫なのかなあ)じゃ、じゃあ手伝ってもらおうかな」
「あいっ」
此処で断ったとしてもまだ寝ている三人の所にを置いて行くのはしのびない。
どうせ、作るといってもサンドウィッチとかだし…大丈夫、だよね?
じゃあ連れて降りようと僕が抱き上げようとすると、は首を横に振った。
その代わり手を差し出してきた。
握り返すと僕を引っ張って歩き出す。
『ああ成程…』
自分で歩きたいんだ。
そういえば昨日はずっと誰かが抱っこしていたもんね。
階段は流石に危ないんじゃないかなあと思ったけど、ゆっくり一段ずつ手摺に掴りながらも自分の足で降りる。
心の中で頑張れ、頑張れと繰り返しながら手を握って一緒に降りる。
五分位かかったけど、ようやく降りられた達成感からかは物凄い笑顔を浮かべた。
可愛いなあ、本当。
キッチンに入って、用に椅子を持ってきてやり水を溜めた容器の中に野菜を入れる。
これを洗うんだよ、と説明すると一個ずつ丁寧に洗い始めた。
僕はその間に包丁を使うものを先に準備しておく。
「じゃあ、。これを一つずつ重ねて、最後にパンを乗っけてね」
「あい」
材料を並べて、一つずつ実演してやれば同じ様にやってみせる。
至極丁寧にしてくれるのでそこは有難い。
この間にスープでも作ろうかな。
「りゅかーできたよー」
「うん、すごいね。美味しそうだよ」
「おいししょー」
後はスープを少し蒸らすだけだし、もう皆起こしても大丈夫だよね。
の手を引き、もう一度階段を上がる。
降りた時と同じく一段一段ゆっくりと。
部屋に入ればまだ誰も起きていなかった。
よっぽど疲れてたのかな?とと顔を見合わせ、一番近くのガイのベッドに行く。
「、起こしてあげて」
「がーいー、がーいー」
がぽふぽふと布団の上からガイを叩く。
それでも起きない為はむっとして、今度はガイの頬を叩く。
ぺちぺちと叩くとガイがようやく目を開けた。
「…おはよう…、ルカ…」
「おはよう、もう朝ごはん出来てるよ」
「あー…なんか凄い深い眠りだった…。それだけ安心出来たってことかな?」
「僕もだよ。普段戦ってると宿でも眠りが浅いのに…」
は今度はジョニーのベッドへ駆け寄り、ジョニーを起こしにかかった。
だが数秒と経たずジョニーの腕がに巻きついた。
「みゅっ!?」
「なんだよ〜〜〜もう朝か?、もう一回眠ろうぜ…」
「めっなの。おっきしゅるの」
「あだだだだだ。わかったわかった」
がガイと同じくぺちぺちとジョニーの頬を叩くものだから観念してジョニーも起きた。
そしてまだ頭上で熟睡しているリッドを見ると、ニヤリと笑いを抱えたまま梯子を登ってゆく。
「リッド朝だぞ〜〜〜!」
「ぐえっ!…なんだぁ…!?」
なんと寝ているリッドの上にを乗せた。
いきなりの衝撃に唸り声を上げるリッド。
犯人がニヤニヤと笑っているジョニーだと解ると、枕を投げつけた。
それを華麗にかわし、ジョニーは部屋を出て行っちゃった。
を抱えて上から降りてくるリッド。まだ少し目が覚め切ってないみたい。
「朝飯?」
「うん。僕とで作ったんだよ。ねー」
「ねー」
「朝飯♪朝飯♪」
さっきの怒りはどこへやら、スキップしながら部屋を出て行くリッドに苦笑しながら僕らも階下へ降りる。
「早い一日だったね…」
昨日のことを色々思い返す。
家に驚いたり、皆でご飯を食べたり、お風呂に入ったり、夜が泣き出しちゃったり。
「もう交代かー。なんか名残惜しいなあ…」
の頭を撫でながらガイが呟く。
さり気なくほっぺについた食べかすも拭いてあげてる。
「此処で暮らしても良いんだよなあ?…俺引っ越そうかな」
リッドの言葉に一瞬頷きそうになる。
でも…僕は実家があるからなあ…。
「でも、取り合えず世話係が一周するまでは出来ないぞ。決まりだからな」
そう、ジョニーが言うようにこれは最初に決めたこと。
まずは最初に決めたグループだけでやり遂げること。
その為住むことはまだ叶わない。
僕達は全然問題ないグループだったけど…中には相性悪いんじゃないかって言うグループも見受けられた。
そこに…を入れて…大丈夫かな?
ちらっと目線を送るとにこーっと笑う。
なんか色々考えてたことが吹っ飛んじゃうくらい可愛い笑顔。
サンドウィッチを頬張りながら、幸せそうなを見ると何にも言えなくなった。
家を後にし、僕らは今日の世話当番である次のグループのいる噴水広場へと向かった。
大分近づいて来たと思うと何やらいがみ合う声が聞こえる。
・・・・・・・大丈夫かなあ?
「何故僕がお前達と組まねばならないんだ!」
「それはこちらの台詞だ。貴様等なんかと同じ屋根の下だと思うのも納得がいかん」
「じゃあ世話係になんで立候補してんのさ」
「落ち着け、クジの結果なのだから仕方が無いだろう」
其処にいたのは眉間に皺を寄せているリオン。
他の三人の言葉等何処吹く風と言った顔をしているワルター。
呆れた顔で二人を見ているのはシンクとクラトス。
・・・・・・これ大丈夫?!??本当に大丈夫??!
ねえ、もう一回僕達がやった方がよくない!?
絶対この四人上手くいかないよ!!!
いち早く僕が連れているに気付いたシンクが歩み寄ってくる。
じぃっとを見つめるとも見つめ返す。
じい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…っ」
だが凝視に負け、シンクが目を逸らす。
「しんく?」
「…ふう。本当に小さくなってるんだね」
名を呼ばれ、冷静さを取り戻したシンクは僕の腕からを受け取り抱き上げる。
だがどこかぎこちない、まだ戸惑っているのかな。
「な、なあ…お前ら大丈夫か?本当に」
僕と同じ事を考えていたのかリッドが心配そうにシンクに伺う。
シンクは一度リオンとワルターを振り返り、肩を竦めて言った。
「…この組み分けが最初で最後だということを願うよ…」
遠い目をしてシンクが言った。
あのシンクが…諦めって言うかなんか投げやりになってる…!!
まだいがみ合っている二人を見かねてシンクがを地に降ろし、耳元で何か呟く。
するとはおぼつかない足取りで二人の方へ走っていった。
「何言ったんだ?」
「五月蝿いから黙らせてって」
「大体子守(限定)くらい俺一人で出来る。何故貴様等と協力などせねばならん」
「僕だって願い下げだ。特に貴様とはな!」
険悪なムードの二人に怯むことなく、は近づいて行った。
見てるこっちはハラハラしっぱなしだけど、シンクは全然心配してないみたいだ。
「大丈夫だって。がデカイ時にもあの二人の言い争い止めてたんだから」
「りおん、わりゅたー。けんかしちゃめっ」
ぽすっとワルターの足にしがみ付く。
いきなり現れた温もりに一瞬驚いたワルターだけど目線を下げてだと気付いた瞬間、さっきまでの刺々しい雰囲気が消えた。
「…っ…!お前いつの間に…!」
「けんかしちゃめっなの。けんかしたら…うーと…えーと…でーたさいしゅなの」
なんだかとても恐ろしい言葉が聞こえた。
その言葉にリオンとワルターが石化したのは気のせいじゃないだろう。
それはアドリビトムの人間が誰でも怯えるあの人のよく言う台詞。
『データ採取完了…ぐふふ』
「、そういう言葉は覚えなくて良い。それより此方に来い」
「行く必要は無いと思うが?は此方を選んだのだからな」
ああ…なんか新たな火種が……!!
妙に勝ち誇ったワルターにリオンが余計機嫌悪くしてるぅぅ!!
「けんかしたーめってゆったの!!」
とうとうが切れた。
怒る…と言うより泣きそうになって、必死に堪えている。
慌てて二人が諌め始めた。
「ぼ、僕達は喧嘩なんてしてないぞっ!なあ、ワルター?」
「そ、そうだ。だから泣くんじゃない!」
「……ほんと?」
「「ああ!」」
あの二人が慌ててるところなんて、初めて見た。
ああ、がいればなんとかなるかもしれない。
「わーい、みんななかよしー♪」
『『……ほっ…』』
が泣かずに済んでホッとする二人。
「ね?」
「確かに…。最強だねえ、は」
「誰も勝てないさ…あの無邪気さには、ね」
気まぐれに始めたこのシリーズ…続くかな?