一通の手紙がイクセンのアドリビトム達へ届いた―――。






「ロイド、シンク、ノーマ。お前達に手紙だ」
「「「手紙?」」」





クラースから手渡されたそれは水色の封筒。
外から来る手紙があったか?首を傾げながら差出人を見てみると、そこに書かれた名前は大切な友人の名。


「…っ…あたしロニィとマリりん呼んでくる!!」


ノーマは急ぎ宿屋へと向かい、数分後二人を引っ張って戻ってきた。



「いきなりなんだよ〜仕事中だぞ?」
「何があったのだ?」



から手紙が届いたんだ!!」


ロイドが意気揚々と見せた封筒に、ロニとマリーも表情を輝かせた。
代表としてノーマが読み上げることになった。


















『―イクセンの皆へ



手紙なんて書くの初めてだからちょっとおかしいかもしれないけど、近況報告です。

行方不明だったエルグレアのアドリビトムも無事助けることが出来たよ。

リオンやティア達は一旦王都へ戻るって言って、先に旅立ったけどオレは何日かエルグレアに残ることにしたんだ』






「ええ?!じゃあまだ帰ってこないのかよ!!」

「ロイド五月蝿い。手紙聞こえない」




『あ、そうそうシンク。此処に兄弟いるなら教えてくれれば良かったのに。イオンとフローリアン、結構仲良くなったよ』




「…忘れてた」
「シンク兄弟いたのか?!しかも二人も」



『こっちのアドリビトムの人達は女の人が多くてちょっと大変だ。男って言ったらオレ以外イオンとフローリアンだけなんだよ』




「な、なんて羨ましい所にいるんだ!!!」

「はい静かにー」






『クエストにも結構色んなメンバーで行ったけど、こうして見ると後衛の人の大変さが解ったよ。
 前衛がいるといないとじゃ違うって言ってくれる。ノーマも苦労してるんだね』


「そうそう〜〜〜さっすがぴょん解ってる〜。その優しさをシンシンに分けたげて」
「さっさと続き読んでよ」




『結構力もついてきたし、多分エルグレアからイクセンなら簡単に帰れるようになったから。また折を見て帰るね。
 それでは、皆怪我には気をつけて。
                                                         




「なんか、ってどんどん強くなってくな」
「確かに。こないだアドリビトムに入ったばっかだってのにね」

「私達も負けていられないな。が帰ってきたときに笑われないようにせねば、なあロニ?」
「なんで俺?!ちっくしょ〜〜!!俺だって!!きゃーきゃー言われるナイスガイになってやるぜ!」
「ロニィのはちょっと違うでしょ〜」

「まったく…。だが、元気そうで何よりだ」








いつでも帰っておいで



















「イオン、今日のクエストさー」
「あ、!丁度良かったです。少し良いですか?」
「?え、ああうん。大丈夫」


話がある、とイオンの私室に案内され席を勧められる。
温かい紅茶を出してもらい、口を付けているとイオンが一枚の封筒を出した。





「…何コレ。誰から……あれ、このマーク見たことが………まさか!!?」




慌てて懐から二つのエンブレムを出し、封筒についているマークと照らし合わせる。



それはこの間一緒に冒険した大切な仲間が所属している軍のシンボル。




だが、差出人の名前はリオンでもなければティアでもない。









「このマークがあるってことはホーリークレスト軍のだよな?」
「そうです。差出人はそこの軍の少佐であるアトワイト・エックス殿です」



アトワイトさんはこの街の出身で、エルグレアのアドリビトムとの連絡役を担っているそうだ。
定期的に情勢を記した文書を送ってくる代わりにイオンにエルグレアの様子を伝えてもらうのだと。



「…で、この手紙とオレの関係は?」

「今回の手紙には各国で起こっている異常事態について書かれていました。
 軍でも色々と調査中だそうですが、事がはっきりしなければ大きな行動に移れません」





まあ確かにはっきりしてないって言ったらしてないね。

まず、遺跡に関しては各地のアドリビトムが調査することだし。
かと言えばアドリビトムが行方不明になる事件が起こったり、敵方もはっきりしてない。
どんな組織で、どんな目的を持って行動しているのか判らないから対処しきれない。






「ですが今回の事をリオン殿達が報告したら、軍が貴方に来てもらいたいと言っているそうなのです」
「はい??」




思わず聞き返してしまったぞ?

軍が、オレに????


そんなーあ、オレだってまだよく判らない事だらけなんですがー?
リオン達どんな報告したんだろう……。









「ホーリークレスト軍って何処にいるんだ?」
「拠点は王都エヴァです。訪ねるなら僕の名前を出してください」
「んーでも寄り道しながら行くと思うけど…良いのか?」
「はい。緊急というわけでもないようですし、道程は長いですからね」



イオンが地図を広げ、エヴァを指し示してくれる。
其処へ行くまでは幾つかの町を経由したり、森を抜けたり、はたまた海を渡ったりしなければならない。







「それから、が良ければ誰か同行者を連れて行ってくださいませんか?」
「へ?でも良いのか?遠いし…」
「アドリビトムたる者が一箇所に留まっていては情報も滞りますし…何より皆さんが貴方と共になら構わないと」




帰りは軍に言えば送ってもらえるから気にしないでくれ、と言うイオンに対しオレは少々悩んでいた。
此処にいるアドリビトムはイオンとフローリアン以外皆女性であり、サポート系が多い。


確実に長旅だし、困難が多いことは確かだ。
オレは良いけど…本当に皆いいのかなあ…?



「僕とフローリアンは此処を離れられないので一緒にいけなくて残念ですが、今クエストに出ていない人を誘ってはどうでしょう?」























誘ってはどうでしょう…ってなあ…。
どう言えば良いんだ?
「オレと一緒に旅してくれませんか?」それとも「ちょっと王都までついてきてもらえる?」とか?
前半はプロポーズかよ!後半ガキかっての!!



「大体誰誘えば良いんだろう…」



パーティバランスから考えれば、オレは前衛なんだから回復魔法を使える人の方が正直助かる。
そうすれば道具の節約にもなるし、何より安心して戦えるからな。




「あ」




そうだ、あの人に声をかけてみよう。























「と、いうわけなんだけど…。遠出だから、そっちが良ければついてきてほしいんだ」

「…わ、私?!でいいの…?」




オレが誘ったのはシャーリィ。
彼女なら回復魔法や、攻撃呪文も使えるし何より……



「確かシャーリィ、お兄さんが別の街にいるんだろ?エヴァに行く途中にでも会いに行こうよ」




彼女はエルグレアに来る前、兄代わりの青年と共に暮らしていた。
だが、彼は今マリントルーパーの腕を買われ、別の街に住んでいる。
シャーリィもエルグレアに移り住んだ今は実の姉と暮らし、もう青年とは長いこと会っていないらしい。




「…さんが良いなら私は嬉しいけど…。足手まといにならないように頑張るね!」
「サンキュ。それじゃあ出発は明朝だ。準備、しっかり済ませて置いて」



イオンにシャーリィが同行することを告げて、エルグレアのアドリビトム、それから街の人に出来るだけ挨拶をして。
先ず目指すは此処から南西に進み、山を越えた“マールブレス”と言う町。







長い旅が始まる。